SSブログ

ssh647 受験は行き先を決めるためだけのものじゃない [志望理由・進路選択]

<2014>

 

 今年もセンター試験が間近となりました。私の担当している生徒たちももうすぐ出陣です。

 

 ところで。

 受験って、ただ行き先を決めるためだけのものだと考えている人が多いように思います。

 生徒にもいますけど、社会人にはもっと多い。

 

 こういう人からすると、実際に進路指導をする私たちの仕事は、かなり理解しにくいんじゃないでしょうか。

 例えば、家庭の経済的な事情から、国公立大学への進学だけを考えているという場合でも、私たちは私大の併願を求めます。

 あるいは、本人も親も「◯◯大学一本で勝負したい、ダメなら浪人して来年挑戦する」と言っていても、××大学の併願受験を強く求めます。

 私立も国立前期もダメで、残る国立後期もE判定で合格の見込みが全くなくても、その後期の受験をするように強く指導します。

 医学部志望の生徒に、敢えて薬学部や理学部の受験をさせることもあります。

 

 学校(や予備校)への不信感が強い人なら、こういうのはただの実績稼ぎか自己満足だろうと詮索するところでしょう。しかし、私たちは真剣です。

 

 受験は、ただ行き先を決めるためのものじゃないからです。


 

 国立のみを志望する生徒に敢えて私立の併願をさせるのは、国立受験をベストコンディションで迎えるためです。

大学入試で、第一志望校の受験が一番最初というのは、常識的には禁忌事項です。特に現役生の場合、全国から集まった受験生と勝負する機会がこれまでありません(センター試験は同じ高校の仲間がいっぱいいる)。生まれて初めてのそういう機会は、予想外の緊張があります。それが勝負というのはあまりに危険です。まず第二志望以下の大学を受験し、そこで場慣れして、第一志望に臨む。お金も手間もかかりますが、ぶっつけ本番の危険を冒すよりはこちらの方が確実です。

 

 ◯◯大学一本という生徒に敢えて××大学を受けさせるのは、自分の力を客観的に認識するためです。特に◯◯大学が難関で、その生徒がさほど力がない場合、身の程を知るためにもっとランクの低い大学を受験させます。◯◯大学だけ受けて浪人というのでは、本人のプライドがまったく痛んでいません。◯◯大学よりもはるかに下の××大学すら受からなかったという事実を体験することで、翌年は真剣に頑張れるはずです。

 

 受かりっこないE判定の後期を受験させるのは、翌年の準備です。同じ2週間でも、夏場の2週間と、受験シーズンののるかそるかの2週間では、密度が全然違います。ここでの頑張りは非常に力になります。それに、最後まで頑張った人間と、途中で放棄してしまった人間とでは、4月のスタートが全然違います。

 

 医学部志望の生徒に薬学や理学を受験させるのは、力の確認です。医学部は難関であるだけでなく定員が小さい。力があってもちょっとした不運で合格できないことが多々あります。そういう時のために、自分が受験本番でどこまでの力が出せるのかを、他学部の受験で実績として残しておく。医学部はダメだったが薬学部は合格したという事実が、翌年の頑張りを支えます。

 

 

 実際に受験を戦ってみないと見えてこないことは、いっぱいあります。

 本人の志望理由や覚悟が、受験をする中でだんだん固まっていくということはザラにあります。

 

 

 部外者から見たら愚かしいような、不経済で費用対対価の無駄としか思えないような行為も、受験生にとっては、今後の人生を後押しする重要な行為なんです。


 

nice!(0) 

nice! 0