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ssh634 生徒の希望&保護者の意向 VS 教員の想い [志望理由・進路選択]

<2013>

 

 タイトルが三題噺になってますけど、今回は進路選択ネタ。

 

 秋は推薦・AO入試のシーズンです。AO8月あたりから受験が始まっていますが、多くは9月です。一方、推薦の方は11月がハイシーズンでして、910月は出願準備(推薦の校内選考など)で忙しい時期です。本年度の私は3年生の担任ですので、今月はなかなか多忙です。

 

 進路選択は最終的には本人の問題です。本人の人生なのだから、本人の意思で選択されることが本来です。

 とは言え、178歳の高校生にその選択をぜーんぶ任せるのはあまりに危険。オトナとしては、十分な情報を与え、丁寧に話をして、本人の希望をしっかり理解した上で、本人があまりわかっていないような選択肢を提示したり、場合によっては強くアドバイスをしてやらねばなりません。

 私たち教員の場合は、こういう仕事を進路指導と呼ぶわけです。

 

 進路選択には保護者の意向も重要です。当然、私たちは保護者の意向も理解しながら進路指導を進めていきます。

 保護者ということで言うと、私が大学進学関係の進路指導を担当するようになったころ(15年くらい前)には、医学部に進学させたいとか現役で国公立を決めてもらわなければならないとか、保護者が妙に高望みするのを引っ込めてもらうのが一番の難題でした。自分の子どもの器というか身の程が全然わかってない保護者がけっこういたんですよ。

 かと言って「ムリです」と言っても意固地にするだけで逆効果。妙に威丈高になっちゃたりする。

 懇談で先生を言い負かしたって受験に何の得もないんですけど、懇談みたいな場になるとすごく戦闘的になる人って、よくいるんですよ。

 私はある時期から作戦を変えて、事実だけを提示するようにしました。「あ、国立の医学部ですか。じゃセンターで90%欲しいですね。もっとも昨年一番点数の高かった生徒が90%くらいでしたから、本校でトップクラスの成績を取ることが必要ですね。」とか。陰険ですなあ。


 時は流れて、最近ではこの逆のパターンでけっこう苦慮しています。

 保護者が妙にカタいんですよ。


 

 受験業界の皆様が、昨今の入試は旅行のトレンドよろしく「安近短」だと言ってます。学費の安い、自宅から近い大学にすんなり進学することを望んでいると。

 で、この「安近短」を切実に感じているのは、受験生本人よりも保護者です。

 当然ですよね。日本では学費を出すのは親の仕事です(日本ではと書いたのは、先進国では学費は公費で負担するか出世払いで本人が負担するのが常識だからです)。自衛手段を講じなければ危ないのは国だけじゃありません。

 加えて、私の周囲に限ってかも知れませんが、最近の生徒はかなり保護者の意向を大切に考えています。オトナなんかナンセンスと反社会的な反抗ばかりしていた団塊世代とはえらい違い。イマドキの子どもは親を大切に考えています。


 すると、こういう志望が必然的に増えます。すなわち、

  • あまり家から遠いところには行って欲しくない。
  • できれば国公立に進んで欲しい。
  • 推薦かAOで早く合格を決めて欲しい。

 これは裏返すと、家から離れた大学を受験すること・あえて私大に挑戦すること・推薦やAOを見送り3月までとことん一般入試で勝負することは、保護者的にはありがたくないということです。

 私も同年代の子どもを持つ親ですから、その気持ちは本当によーーーーーーくわかります。地元の国公立に推薦であっさり進んでくれたら、お赤飯を炊いてお祝いしたいですわ。

 

 しかし。それも内容によります。

 

 例えば、本当に力があって(それこそ早慶レベルの)、将来も十分に活躍できそうな生徒が、親子ともどもやってきて地方国公立に推薦で進学したいと言ってきたら、アナタなら何て言いますか?

 あるいは、ずっと医学部を目指して頑張ってきた生徒が、急に薬学部の公募推薦入試をやりたいと言ってきたら、どうしますか?

 

 私は、受け入れてはいけないと思います。

 少なくともすんなり受け入れてはならない。

 親も本人もカタい道を進もうとしている時、あえてそれに疑義をはさんで、よりよい進路を目指すべきだと干渉するのは、教員にしかできない仕事です。

 

 最終的に結論が同じでも、それは大した問題ではありません。本当にそれでいいんですか?ということをきちんと考えさせることは、最低でもやらせないといけない。


 生徒と保護者の希望をなるべくかなえるのが教育の仕事である。一般論としてはそうだと思います。

 しかし。生徒と保護者の希望にあえて立ち向かうことが必要な場合もある。

 生徒の希望&保護者の意向 VS 教員の想い。

 進路指導というごく狭い領域においてすら、こういう図式に立ち向かう勇気は必要なのです。

 


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