ssh635 デキの良くない人は東京か大阪を受けろ

<2013>

 

＜舞台＞

　8月に開かれた高校の同窓会で、音楽部(合唱と室内楽から成る)の仲間が2次会で入った居酒屋。

 

＜登場人物＞

　私：　某県立高校教諭(英語科)。音楽部ではテノールのパートリーダー。

　I君：　某県立高校教諭(地歴公民科)。音楽部では指揮者。現在我らが母校に勤務し、音楽部の顧問。

　Kさん：　小児科医。音楽部ではアルト担当。現在は地元の大きな病院の小児科長。

　T君：　音楽部副部長で、室内楽のビオラ担当。大学卒業後地元企業に就職し、最近転職してただ今単身赴任常態。

　N君：　某国立大学教授。教育学者。音楽部では室内楽コンサートマスター、楽器はフルート。

 

 

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　T君：　いやあI君、ウチの息子が大変お世話になって。

　I君：　何言ってるの、こっちこそホントに助かったって。室内楽もなかなか部員を揃えるのが大変でさ。

　私：　そういや、ウチの小僧が入学したときも声をかけてくれたそうじゃない。アイツ歌なんか全然できないのに。

　I君：　いや、そりゃ部員勧誘は大事だからね。特に男声は。

　Kさん：　時にshira君、そろそろOB会(音楽部OBの合唱&室内楽サークル)の練習に出て来なよ。

　私：　いや～、オレもうダメだわ。声も出ないし、ステージに立つ気もなくなっちゃって。

　T君：　そんなこと言わないでぜひ来てよ。OB会も平均年齢が高くて、何て言うか、おばあちゃんばっかりで。もうちょっと下の人たちに来てもらうとありがたいんで。

　Kさん：　そうだよ。それに男声が少ないんだって。

 

　I君：　ところでN君さ、2年前の同窓会で仕事が大変だって言ってたけど、相変わらず？

　N君：　うん、もうホントに大変。行政に提出する書類がすごく多くて、自分の研究がなかなかできなくて。この歳で睡眠時間を削らなきゃいけないってのは身体にもキツいよ。

　私：　高校もずいぶんと書類提出が増えたけどね。

　N君：　独法化してからさ、補助金でも何でもみんなヒモつきで、計画書やら報告書やらをたくさん書かないとお金がもらえないんだよね。だからどうしてもやらなきゃいけないんだけど。

　私：　あ～、そりゃ大変だ。高校だとそこまで切実じゃないもん。

　Kさん：　◯◯大学(N君の勤務する大学)ほどのところでもそうなんだ。

 

　N君：　何たって、大学の研究予算の半分くらいは東大が持ってっちゃうからね。残りのうちの半分くらいを京大が取って、あとの残りをみんなで取り合うって感じだから。

　Kさん：　京大って、N君の母校じゃん。

　私：　天下の京大でも東大の半分なんだ。

　N君：　しかしさあ、国立大学ってこんなにお金に困るとは思わなかったよ。ウチの学長なんか四六時中お金のことばっかり考えてるよ。どうやって電気代を節約するかとか。つくづく法人化ってのは大学を締め上げるには巧みなやり方だったと思うね。

 

　私：　あ、◯◯大学って、夏休みはいつまで？最近、大学も夏休みが短いじゃん。

　N君：　学生は8月から9月中旬までだけど、こっちはお盆だけだね。またすぐ帰って仕事しないと。

　I君：　あの辺って観光地じゃない。そのスケジュールだと観光客がいっぱい来るんじゃないの？

　N君：　まったくその通りでさ。自宅から電車で通勤してるんだけど、7月なんてもう観光客がいっぱい乗ってきて。朝、疲れの抜けない身体で、あ～また今日も授業やらなきゃいけないんだな～とか思いながら電車に揺られてると、車内の観光客がちょっと恨めしくなるよ。

　I君：　へ～、N君みたいな人でも授業が面倒くさいなあとか思うことあるんだ。意外。

　N君：　そりゃそうだよ。いや、授業とかゼミそのものは楽しいよ。学生はホントにいいんだよ。

　私：　ああ、教え子を送ってくれって何度も言われているのに、全然送れなくて悪いね。

　N君：　いや、ぜひ送ってよ。

　私：　オレはちゃんと勧めてるって。あそこ難しくってなかなか受からねえんだよ。

 

　I君：　あのさ、入試の話、聞いていい？

　N君：　どうぞ。

　I君：　推薦書って、読む？あれ書くの大変なんだよね。

　私：　先生の書いたものなんか、ロクに読まないでしょ？どうせホメ言葉ばっかりだし。

　N君：　いや、全部ちゃんと読むよ。特に、リキの入った推薦書はしっかり読むよ。

　私：　へえ、意外。でも、それで合否が左右されることはないよね？

　N君：　そりゃあね。でも、担任にここまで肩入れされるんだから、一体どんな生徒なんだろうって、興味は湧くからね。

 

　I君：　ところでさ、N君的には、大阪って、どう？

　N君：　んーーー・・・。困っちゃうよねえ。もうああなっちゃうと、教員がやる気を失っちゃってるでしょ。

　私：　東京も似たようなもんでしょ。

　N君：　そうだよねえ。

　私：　N君、教育学が専門だったよね。◯◯大って、教職志望多いの？

　N君：　けっこういるよ。

　I君：　大阪出身の学生って多いの？

　N君：　多いよ。近いからね。

　私：　大阪の教員採用試験を受ける子には、何て言ってるの？

　N君：　(苦笑)いやあ、もう人気が全然下がっちゃってるからさあ。

　I君：　やっぱり、あまり勧めない？

　N君：　て言うかさ、あんまりデキの良くない学生には、東京か大阪なら受かるかもしれないぞって言ってるんだよ。

　一同：　そっかー・・・(ため息)。