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ssh639 一人一人の課題をひとつひとつ潰した結果が「実績」 [教育問題]

<2013>

 

 昨今はイナカの公立高校であっても進路実績がけっこう問われます。サンデー毎日やAeraあたりでもネタにされてるくらいですから。公立にしてそうなんですから、私立は死活問題でしょう。

 考えてみれば、大学進学実績を競ったり競わせたりするのなら、大学そのものを作っちまえばいいような気もします。ニッポンの優秀な株式会社のパワーを持ってすれば、東大を凌駕する大学の一つくらい作ってみせても不思議はなさそうなんですけど、彼らはそういうことはせんのですね。なぜかしら?

 

 さて、高校から大学への進学実績を左右する要因って、何でしょうか?

 

 現職の高校教諭がこういうことを言っちゃマズいとは思いますが、最大の要因は生徒の自力です。

 もっと身もフタもないことを言うと、よりデキる生徒をより多く入学させることのできた高校が、進学実績の勝者となります。素材の勝負と言いますか。この辺はスポーツと同じです。もともと力のある選手を確保した学校のチームはやっぱり強いです。もし高校が進学実績で「勝負」しようとするなら、勝負は生徒募集の時点で大勢が決します。

 とは言え、募集時の営業努力だけで「いい生徒」を集められるほど世の中は甘くありません。あの高校に行けば卒業後の進路も希望が持てると思ってもらえなければ、生徒保護者には選んでもらえません。

 

 ま、私はそういう「競争」には今も昔も関心はありません。私は「目の前の生徒に対しての最善」しか考えたことがないです。どんな生徒が入学してこようと、それに対応するのが学校の先生の務めってもんでしょう。目の前の生徒に最善を尽くす。それで評判が上がればありがたいし、そうでなくてもやることは同じです。

 

 てなことを書いておいてナンですが、私が勤務してきた学校は、幸いなことに一応の実績を上げることができています。入学してきてくれた生徒たちの力からすれば十分、あるいは十分プラスアルファくらいの進路実現をしてくれています。同じような環境の学校と比べても、まずまず以上だと思います。

 それはどうしてか?


 

 前任校でも現任校でも、ちょっとばかり自慢できるような進学実績を上げた年度がありました。

 こういう情報は伝わるのが早い。県内の学校から視察が来たり、連絡会議でレポートを求められたりします。

 実績が伸びた秘密はどこにあるのか?どんなことをやったのか?と。

 

 でも実は、発表できるような秘密も秘訣も新しい取り組みも、さほどないんですよ。

 

 現在担当している学年で、昨年から今年にかけて希望者向けの添削指導をやっています。昨年は英文和訳、今年は英作文。

 やってみると、最初は悲惨です。添削も手間がかかる。英作だと、冠詞や前置詞や時制なんかをいちいちチェックしてコメントをつけてやらないといけない。けっこうデキる生徒が過去形と過去完了形の使い分けがわかってなかったりして、なかなか面倒です。

 しかし、やってるうちに、少しずつ上達してくる。

 

 そうやって、一人一人が抱える、ひとつひとつの細かい課題を、一個一個潰していってやると、全体のレベルがほんの少しずつだけれど上がってきます。

 実績ってのは、そういう取り組みの積み重ねの結果です。

 やっている当座は、見通しはあまり立っていません。ただただ目の前の課題を何とかしようとしているだけ。

 ちょっと立派な実績が上がったとして、後で思い返してみてもこれといった秘訣なんてなかったよなあというのは、そういう理由によります。

 

 原辰徳が2002年にジャイアンツの監督に初めて就任し、1年目にしてリーグ優勝と日本シリーズ優勝を成し遂げます。日本シリーズではライオンズを4-0で下す圧勝。

 その優勝報告の席で、当時の渡邊恒雄オーナーが「強過ぎたね」と満面の笑みで言ったのに対し、原は「結果としては。でも現場でやっている方はもうギリギリで。」と複雑な表情で応じました。

 

 学校だって、現場はいつでもギリギリでやってるんですよ。だから、ちっとばかり実績が良かったからと言って、吹聴するようなネタもないわけです。


 11月は推薦・AOシーズンです。私の学年からもたくさんの生徒が志望校に挑戦します。

 私たちはその一人一人の抱える一つ一つの課題を何とかしていきます。面談して面接して添削して練習して、足りない部分を一個一個克服させていきます。

 そういう地道な取り組みで、一人一人の生徒の合格可能性が少しずつ上げていく。

 なんともスローで非効率的な仕事ですけど、これを上回る方法論は今のところありません。

 

 受験勉強に一攫千金がないように、受験指導も一網打尽ってわけにゃいかないのですよ。


 

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