ssh640 志望理由書作成指導の困難さ [志望理由・進路選択]
<2013>
更新ペースがちいとも上がらないsshであります。今月も週に1本アップできれば上々という感じです。
今年、4年振りに3年生の担任となって、推薦・AOの指導をジャカスカと担当しました。
で、改めて認識したのが、指導が最も大変なのは志望理由書だということです。
現任校はひと学年が300人以上の大きな学校ですんで、面接や小論文の指導は職員が手分けして行います。校長先生まで手伝ってくれるのはありがたいことです。しかし志望理由書は基本的に担任が指導します。
志望理由を言葉にするのはかなりの重労働です。生徒本人には自分の「想い」を一人で対象化できるほどの力はありません(生徒じゃなくてもそうですけど)。どうしても他者の視点からあれこれ言ってもらわないといけない。
この「他者の視点からあれこれ」言ってやるのが指導する側の仕事なんですけど、こいつがなかなか大変なんです。
ここでは、どれだけ良い「問」がぶつけられるかが指導のカギのなります。生徒が「ああ、そうか、自分が本当に言いたかったのはそれだったんだ」と膝を打つような問がぶつけられれば最高です。
でも、それは宝探しみたいな作業です。
もちろん生徒は最初に自分なりに志望理由書を下書きして持参します。それをベースに指導は行われるのですが、文面は至ってお粗末なものであることが通例。宝探しのヒントはある場合もあるし、ない場合もあります。
こと私が担当する場合、ほとんど唯一にして最大の手がかりは、生徒の「そうじゃない」「それはちょっと違う」という返事、いわばダメ出しです。
人間ってのは、自分の本当に欲しいもの、本当に言いたい事を形にすることがなかなかできません。
しかし、面白いことに、ダメ出しはできます。何が欲しいのか、何を言いたいのかはうまく言えなくても、「そういうことじゃなくて・・・」とNoを言うことはできる。それは自分が本当に欲しいもの・言いたい事じゃないということだけは明確にわかる。
だから、指導する側は、あらん限りの知恵を絞って、硬軟様々な問を生徒にぶつけ、少しずつ生徒の本当の「想い」に近づいていきます。もちろん、生徒も真剣に問への答えを考えます。
そうこうしているうちに、いい「問」がヒットすることがあります。そうすると生徒は一気に自分の志望理由を対象化していきます。もともと本気の「想い」があるのだから、ヒントさえつかめばあとは割とスムーズです。
志望理由書の指導は、ある種のライブ感があります。その場その場の真剣勝負と言いますか。
本来ならば、どんな問を立てて、どんな風にぶつけていくのが効果的なのかを解説できればいいと思うのですけれど、今のところ私にはそういう脳内の整理整頓ができていません。当該生徒との1対1のやり取りの中で、その場その場で思いついたベストと思われる問をぶつけているだけでして。
小論文や面接の指導の方が、まだ指導方法のイロハみたいなものは語りやすいように思えます。
まあでも、志望理由書を作る上でどんな人にどのような問を与えるのがいいのかが理論かマニュアルみたいに明確になることは期待薄だと思いますね。そんなもんが発明されたら、シューカツも婚活もお茶の子さいさいでしょう。
本人が明確に言葉にできずに苦労しているものを、他者が簡単に対象化できるとは思えません。指導する側には、相手の人生の何百分の1を引き受けるくらいの覚悟と労力は必要なんでしょう。
というわけで、志望理由書指導は、くたびれます。