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ssh686 社説の読み方〜沖縄県知事選編(1) 辺野古移設推進3紙の社説  [社説の読み方]

<2014>

 

 任期満了に伴う沖縄県知事選挙が1116日に行われました。

 子どものころ「任期満了」って言葉がわからなくて、選挙ってのは「人気」と関係があるのかなと思ってましたっけ。

 そーゆーくだらんことは置いといて。選挙結果はご存知の通り、前那覇市長の新人・翁長雄志が現職の仲井真弘多らを破り当選。有効投票数の過半数を獲得したのだから、完勝と言って差し支えないでしょう。

 

 この選挙への関心は中央メディアも非常に高いようで、珍しく5紙が16日朝刊で同時に社説展開しています。ssh的には大変にありがたい展開。しかも主張が真っ二つに割れるという美味しさであります。

 

 せっかくのいいネタなので、2回に分けて記事化させていただきます。

 前半では、翁長当選に眉をひそめる辺野古移設推進派の3紙にご登場願いましょう。と言っても、実はこの3紙、内容に大きな違いはありません。なので、3紙まとめて論評させていただきます。(文中の太字部分はshiraによります。)


 まずは読売クン。日ごろ慎重な言葉遣いの読売クンらしからぬ、朝日「誤報」批判の時のような威勢のいい文面です。

◆◆沖縄県知事選 辺野古移設を停滞させるな

 曲折の末、ようやく軌道に乗った米軍普天間飛行場の移設を停滞させてはならない。新知事に慎重な対応を求めたい。

 沖縄県知事選は、翁長雄志・前那覇市長が現職の仲井真弘多氏らを破って初当選した。

 選挙では、普天間飛行場の名護市辺野古への移設の是非が最大の争点とされた。

 元自民党県連幹事長の翁長氏は「移設反対」を唱え、共産、社民など革新政党との保革共闘によって、幅広い支持を集めた。

 自民党推薦の仲井真氏は、「普天間問題の一日も早い解決」を最優先課題に掲げ、「移設容認」の立場を鮮明にした。

 仲井真氏が昨年末、移設先となる辺野古沿岸部の埋め立てを承認したのは、住宅密集地にある普天間飛行場の危険性の早期除去を重視したゆえの決断だった。

 移設予定地は市街地から遠く、騒音や事故の危険性が現状に比べて格段に小さい。沖縄全体の基地負担を大幅に軽減しつつ、米軍の抑止力も維持するうえで、最も現実的な方法なのは間違いない。

 知事選では公明党が、辺野古移設に反対する県本部を説得できずに自主投票としたが、与党の対応として疑問が残った。与党時代に辺野古移設を決めた民主党の自主投票も、無責任だった。

 翁長氏は長年、辺野古移設を容認していたが、民主党の鳩山政権下で反対に転じ、県外移設を主張している。今回、「新辺野古基地は絶対に造らせない」と訴えながら、具体的な代替案を示さなかったのは責任ある態度ではない。

 普天間飛行場の移設が滞れば、「2022年度以降」とされた返還が実現せず、危険な現状の長期固定化を招く恐れがある。他の米軍基地の返還も遅れるだろう。

 この問題にどう対処するか、翁長氏は見解を示すべきである。

 翁長氏は当選を決めた後、埋め立て承認の「取り消し、撤回に向けて断固とした気持ちでやる」と語った。だが、法的に瑕疵(かし)のない承認の取り消しなどは困難だ

 防衛省は現在、仮設道路の追加など埋め立て工事内容の一部変更の承認を県に申請している。

 翁長氏が徹底的に移設を阻止しようとすれば、政府との対立は避けられない。その場合、年3000億円台の沖縄振興予算をどうするか、という問題も生じよう。

 翁長氏も現実路線に立ち、政府との接点を探ってはどうか。

 政府・与党は、翁長氏の出方を見つつ、辺野古移設の作業を着実に進めることが肝要である。◆◆


 

 2本目は産経クン。こちらはいつも通りの威勢の良さです。

◆◆沖縄県知事選 政府は粛々と移設前進を

 沖縄県知事選は、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する翁長雄志(おなが・たけし)前那覇市長が、移設容認派の現職、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)氏を破り当選した。

 翁長氏は「県内に基地を造らせないと訴えてきたので、これを第一にやりたい」と述べ、仲井真氏が昨年暮れに決断した辺野古埋め立て承認の取り消しや撤回の方策を検討する考えを示した。

 だが、日米合意に基づく普天間移設は、抑止力維持の観点から不可欠であり、見直すことはできない。政府は移設工事を粛々と進めなければならない。

 今後、辺野古移設反対派が、県民の意思が示されたと勢いづき、工事阻止をねらって反対運動を激化させることも予想される

 しかし、埋め立て承認は、明らかな虚偽など国の申請に瑕疵(かし)がなければ取り消すことができない。新知事が承認をほごにするようなことは、法的秩序を混乱させるものであり、認められない。

 改めて認識すべきは、日本の安全保障に関わる基地移設の行方を決定する権能は、知事にはないという点である。

 昨年10月の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書も辺野古を「唯一」の移設先とした

 軍拡を進める中国が奪取をねらう尖閣諸島は「沖縄の島」だ。沖縄の西に広がる東シナ海では、中国の海空軍が自衛隊や米軍に危険な挑発行為を繰り返している。最前線となった沖縄を守っているのは日米同盟である。移設の頓挫により、同盟の機能を低下させてはならない。

 市街地に位置する普天間の危険性を除くためにも移設は待ったなしの課題である。反対派の行動は、普天間の固定化につながる最悪の選択となりかねない。

 沖縄の負担軽減はもちろん必要だ。日米両国は8月、普天間の空中給油機部隊を米海兵隊の岩国基地(山口県)へ移駐させた。

 政府は基地問題を総合的かつ現実的にとらえて対応するよう、県民や県に対して説明を続けなければならない。衆院選を最初の論戦の機会とすべきだ。

 沖縄には「沖縄」と「日本」とを、ことさら対立的にとらえる主張も一部にあるが、こうした風潮に乗るべきではない。不安定さをもたらし、中国につけ込む隙を与えることは避けるべきだ。◆◆

 

 

 3本目は日経クン。タイトルはちょっと中道っぽいですが、主張は読売クンや産経クンと見事に同じです。

◆◆いまこそ政府と沖縄は話し合うときだ 

 沖縄県の米軍普天間基地の県内移設を容認した仲井真弘多知事が知事選で敗れた。移設作業が円滑に進まなくなるおそれがある。新知事との話し合いの糸口を探りつつ、日米同盟への影響をいかに小さくするか。安倍晋三首相はこの難題に取り組まねばならない。

 今回の知事選では、沖縄が返還された1972年から続いてきた基地容認の保守と基地反対の革新がぶつかる構図が初めて崩れた。

 初当選した翁長雄志前那覇市長は自民党の沖縄県連幹事長も務めた保守派である。しかし、自民党が推した仲井真氏とたもとを分かち、県内移設反対を掲げて共産党や社民党とも共闘して勝利した。

 背景にあるのは県民意識の変化だ。地元紙の世論調査などによると、県内移設への反対は自民党支持層でも半数を超えており、それが保守分裂を招いた。

 中国の海洋進出で沖縄の地政学的な重要度は高まっている。政府は沖縄などの離島防衛に力を入れると同時に、日米同盟を強化すべく防衛協力の指針(ガイドライン)の改定にも取り組んでいる。

 ところが沖縄ではそうした緊張の高まりが先の大戦での悲惨な経験の記憶を呼び起こし、平和運動が盛り上がるという本土とは逆の現象が起きている。

 ただ、反基地に賛同する県民のすべてが日米安保体制を否定しているのではない。米軍機の騒音や米兵による事件・事故など身近な不満がなかなか解消されないことで「沖縄は軽んじられている」と感情的に反発している面がある。

 ボタンの掛け違いを直すには、安倍政権がこれらの課題に真正面から向き合っているかを目に見える形で示さねばならない。

 翁長氏も国際情勢を冷静に判断し、政府との話し合いのテーブルに着いてもらいたい。名護市での基地建設に必要な埋め立て工事は仲井真氏が承認済みであり、新知事に覆す権限はない

 沖縄県は長年、日米地位協定の改定を求めてきたが、米政府は消極姿勢を貫いてきた。改定は日本政府と沖縄県が足並みをそろえてこそ実現できる。その結果、県民の日常生活に変化があらわれれば県民感情も徐々に軟化しよう。

 普天間は市街地に囲まれた基地である。ひとたび事故が起きれば甚大な被害が生じる。政府と沖縄県がいがみ合っている場合ではない。その原点を確認するところから話し合いを始めるべきだ。◆◆

 


 さて。3紙の意見と論拠をまとめてみましょう。

 意見は「辺野古移設を止めてはならない」。これは全員一致。

 その論拠は、記事中で太字にした部分です。まとめ直すと以下の通り。

  • 辺野古移設は普天間返還のための唯一の現実的選択肢である。(全紙)
  • 沖縄県は日本政府と対立せず、辺野古移設を進める方向での話し合いに応じるべきである。(全紙)
  • 辺野古崎埋立の承認を新知事に覆す権限はない。(全紙)
  • 普天間固定化を避けるためにも、辺野古移設は急がねばならない。(読売・産経)
  • 辺野古移設が進まないと日米同盟に悪影響が出る。(産経・日経)
  • 辺野古移設が進まないと中国の脅威への対応が弱くなる。(産経・日経)
  • 沖縄は地理的に重要な軍事拠点であり、代替が効かない。(産経・日経)
  • 辺野古移設反対に固執することは沖縄の経済振興にマイナスである。(読売)
  • 今回の知事選で移設反対派が過激化する恐れがある。(産経)

 

 さて、今回はここまで。

 次回は辺野古移設再考を主張する各紙の社説を紹介します。

 次回紹介の2紙+1紙は、上記の3紙の論拠そのものに反論しています。そこいらへんをポイントにお読み下さい。


 

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