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ssh755 社説の読み方〜甘利明辞任編(2) [社説の読み方]

<2016>

 

 ssh754の続きです。今回は残りの3紙を6年前と比べながらチェックします。太字や改行の改変についてはssh754同様shiraによるものです。

 

 最初は朝日クン。

◆◆甘利氏の辞任 幕引きにはできぬ

 大臣室での現金授受疑惑が報じられた甘利経済再生相が、辞任した。

 甘利氏はきのうの記者会見で、大臣室と地元事務所で50万円ずつ2回、計100万円を受け取ったことは認めたが、政治資金として適切に処理したと説明した。一方で、地元秘書が寄付として受け取った500万円のうち、300万円を個人で使い込んログイン前の続きでいたことを明らかにし、「国会議員としての監督責任や閣僚としての責務」などに鑑み、辞任を決意したという。安倍首相が続投させる考えを繰り返す中での突然の、そして釈然としない辞任劇である。

 疑惑の発端は、千葉県の建設会社の総務担当者が、独立行政法人都市再生機構(UR)との補償交渉にからむ「口利き」を甘利事務所に依頼、見返りとして現金や接待で1200万円を渡したとする証言を、週刊文春が掲載したことである。甘利氏や秘書に「口利き」の意図がなかったのかどうか、実際にURにどんな働きかけをしたのかなど、きのうの甘利氏の説明では、多くの部分がなお未解明のままだ。告発者の言い分との食い違いは、なお大きい。甘利氏にはさらに調査を進め、結果を速やかに公表する責任がある。

 国会の役割も大きい。甘利氏側と告発者の双方を招致して、それぞれの言い分を精査すべきだ。URや、URを所管する国土交通省とのかかわりも調べる必要がある。

 疑惑のさなかに、自民党の中から気になる声が聞こえた。党幹部から「わなを仕掛けられた感がある」といった発言が続いたのだ。現金を受け取った甘利氏の側が、あたかも被害者であるかの言い分である。

 趣旨のはっきりしない多額のカネが、いとも簡単に政治家に提供される。そして、政治家の側はよく知らない相手からでも当然のように受け取る――。党幹部の発言は、一部の政治家の間では、こうした現金のやりとりが日常的に行われている実態をうかがわせたとも言えるのではないか。

 甘利氏には、難航を重ねた環太平洋経済連携協定(TPP)を、粘り強い交渉で合意に導いた功績があるのは間違いない。安倍内閣にとっても、大きな痛手であろう。だからといって、閣僚を辞することで疑惑に幕を引くことは許されない。真相解明とともに、「政治とカネ」の問題にどう襟を正していくか、国会にも安倍首相にも問われている◆◆


 

 一方、こちらが6年前の小沢一郎秘書逮捕事件のときの社説の抜粋。

◆◆小沢氏はきのうの民主党の幹部会で、問題の献金について「すべてきちんと処理しており、まったく問題はない」と述べたという。鳩山由紀夫幹事長は「いろいろな陰謀があると感じる。政府与党側は何もないところからおかしな話をつかみ取ろうとしているのではないか」と記者団に語った。

 だが、党首の資金団体の会計責任者である側近逮捕という深刻な事件だ。政府与党の陰謀だなどと反発するだけで済まされるはずがない。

 トンネル献金の事実は本当になかったのか。小沢氏自身のかかわりはどうだったのか。小沢氏は自ら国民にきちんと説明しなければならない。◆◆ 

 

 説明責任を果たせという主張はまったく同じ。また、陰謀にはめられたというのは言い訳にならないという意見も同じです。そういう点では論拠の整合性は取れています。意見文としては合格ですね。

 

 

 お次は日経クン。

◆◆疑惑晴らせぬ経財相の辞任は当然だ

 甘利明経済財政・再生相が辞任した。政治とカネを巡る疑惑が完全に払拭されない以上、辞めるのは当然である。閣僚辞任は安倍晋三首相が2012年に政権復帰して以降、4人目だが、政権の中核だった甘利氏の辞任の打撃はこれまでの比ではない。

 世界経済の先行きが不透明なさなか、アベノミクスの司令塔である経財相の役割は極めて大きい。後任の石原伸晃氏はよほどの覚悟で臨まねばならない。閣僚交代が日本経済のブレーキにならないようにしてもらいたい

 記者会見した甘利氏は週刊文春が報じた建設会社からの資金提供などを大筋で認めた。ただ、あくまでも政治資金として受け取り、口利き依頼があったことは知らなかったと強調した。自身の現金授受に関して「スーツの内ポケットにしまった」との週刊文春の記述を「人間として品格が疑われる行為。するはずがない」と否定する場面もあった。重要なのは内ポケットかどうかではない。口利き依頼を本当に知らなかったのか。資金提供の狙いは何か。それらが知りたい。

 甘利氏は衆院議員としての政治活動は続行する意向だ。とすれば閣僚辞任で一件落着ではない。さらなる調査を急ぎ、全容を明らかにしなければ政治家として説明責任を果たしたことにならない。会見で追加調査の公表は「しかるべきとき」にすると述べた。うやむやにしてはならない。その期限を明確にすべきだ。

 辞任の理由は「国会審議に支障を来しかねない」と説明した。閣僚辞任時によく聞くセリフだが、自分は悪くない、とのニュアンスが感じられる。政治資金収支報告書に記載がなかった300万円は秘書が使い込んだという。監督責任だけでもじゅうぶん重い。甘利氏によれば、安倍首相はぎりぎりまで慰留したそうだ。記者団には甘利氏の会見を「丁寧に詳細に説明していた」と語った。政治とカネの問題を甘く見すぎていないか。首相は自身の任命責任をよく認識すべきだ。

 政治とカネの問題は近年、政治資金で私物を購入するなど不適切な使途に焦点が移っていた。政治資金規正法の強化で露骨な現金授受が姿を消していたからだ。古典的な不祥事はなぜ起きたのか。「安倍1強」のもとで古い自民党が復活してきていないか。政界全体で襟を正す必要がある。◆◆

 

 6年前のネタはこれ。

◆◆ 小沢代表は「すべて(政治資金は)きちんと処理している」と党の幹部会で発言したという。また鳩山由紀夫幹事長は検察による逮捕に陰謀を感じるとまで言った。 これでは容疑内容の重大さを分かっているのか疑わせるだけで、国民を納得させられるものではない。きょう行うとしている記者会見では、分かっている事実をあまさず公表し、十分な説明をしてもらいたい。◆◆ 

◆◆東京地検には、捜査権力を公平に行使する観点からも、厳正な姿勢でそれぞれの献金先を調べることが求められる。◆◆ 

 

 これで終わりではない、ちゃんと調べて説明責任を果たせというのは共通。ただし、朝日クンと違って「はめられた」については6年前でしか触れていません。6年前に取り上げたことで、しかも今回「はめられた」と主張したのは1人や2人じゃありませんから、今回その部分に触れないのは不自然です。

 というわけで、論理的整合性にマイナス評価ありです。40点くらいかな。

 

 

 今回のシリーズの大トリを飾るのはsshのアイドル産経クンです。

◆◆甘利氏辞任 金銭授受の異常さに驚く

 甘利明経済再生担当相が辞任した。週刊文春が報じた自身と秘書の金銭授受を認めたものだ。

 甘利氏は大臣室と地元事務所で2回にわたり、千葉県の建設会社側から現金100万円を受け取っていた。政治資金として処理するよう秘書に指示し、収支報告書に記載があったことを強調したが、特定業者と菓子折りの紙袋に入った多額の現金をやりとりするような行為自体、異常である。

 秘書は建設会社から500万円を受け取ったが、収支報告書には200万円の記載しかなかった。300万円は秘書が使ってしまったのだという。これは政治資金規正法の虚偽記載に当たる。

 業務上横領に問われる可能性もあり、甘利氏は秘書を告発すべき事案だ。まさに甘利氏が自らいうように「恥ずかしい事実」である。辞任の決断は当然だ。

 甘利氏は安倍晋三内閣における経済再生の責任者であり、大筋合意した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉を一手に担ってきた。首相の盟友であり、最重要閣僚の一人だった。今国会でも来年度予算案の審議や、TPP発効に向けた国民への説明役として、多くの重責を抱えていた。疑惑や事件の渦中の政治家として、これを全うすることは不可能だったろう。

 閣僚を辞任しても、説明責任は果たされていない。自身、「調査は途上だ」とも述べている。道路工事をめぐる建設会社と都市再生機構(UR)などへの口利きの有無や、現金の授受や過剰な接待の趣旨についても明らかにしなくてはならない。国会議員や秘書が権限に基づく影響力を行使した口利きの見返りに報酬を得ていたとすれば、あっせん利得処罰法に抵触する。

 甘利氏を閣僚として続投させる考えを示していた安倍首相は、辞任を受けて「大変残念だが、甘利氏の意思を尊重する。任命責任は私にある。国民に深くおわび申し上げる」と述べた。

 第2次安倍内閣以降での閣僚の辞任は甘利氏で4人目だ。多すぎる。第1次内閣が相次ぐ閣僚のスキャンダルで次第に崩壊した過去を忘れたわけではあるまい。国内外に、喫緊の重要課題は山積している。安倍首相には気を引き締めて、政権運営にあたってもらいたい。◆◆ 

 

 6年前はこちら。

 ◆◆準大手ゼネコン「西松建設」の裏金事件は、小沢一郎・民主党代表の公設第1秘書らが政治資金規正法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕されるという衝撃的な事件に発展した。小沢氏自身の政治責任はきわめて重いと言わざるを得ない。自ら出処進退を明らかにすべきだろう。政権交代を目指す政党の責任者として、政治とカネの問題で国民の信頼を失いつつあることを重く受けとめるべきだ。◆◆ 

◆◆とくに小沢氏は最近、北朝鮮による拉致事件に対し、金銭的な解決しかないとの趣旨の発言を行ったとされる。政治家の資質を疑いたくなる発言といえる◆◆ 

◆◆麻生太郎首相にとってもここは踏ん張り時である。民主党の混乱に乗じて解散・総選挙を求める声が自民党内から出るだろう。だが、首相が全力を挙げるべき課題は内政外交の懸案を一つでも二つでも解決することだ。株価下落などを受け、追加経済対策策定や補正予算の編成作業などの景気対策も待ったなしだ。さらにアフリカ・ソマリア沖の海賊対策のため、海上警備行動として海自艦船を派遣するほか、海賊行為対処法案(海賊新法)の早期成立を図るべきだ。北朝鮮のミサイル発射問題もある。首相は指導力を発揮する絶好の好機ととらえるべきだ。◆◆

 

 「あっせん利得処罰法」に触れているのは読売クンと同様。これそのものは評価できます。ただ、今回の件について産経クンは読売クン同様、一貫して秘書の責任を追及しています。本人は説明責任だけ果たせという感じ。

 一方、6年前の社説では秘書が逮捕された小沢一郎に対し出処進退を明かにせよと議員辞職を迫りかねない勢い。この姿勢の違いは相当激しいです。

 そんな産経クンにも一貫性のある部分が。それは総理大臣ガンバレとエールを送っているところ。

 こういう言い方はsshでは控えてきたのですが、産経新聞は自民党に強烈なシンパシーを持っていると言わざるを得ないです。政権べったりの新聞など、報道機関でもジャーナリズムでもありません。ただの広報紙です。

 もちろん評価は0点です。マイナスと言いたいくらいですが、読売クンもかなりひどかったから、同点ビリとしておきましょう。

 

 

 今回のシリーズを書いて、つくづく過去のデータを取っておくことは価値があるなと思いました。

 お偉いさんたちは自分たちが過去に言ったこと・書いたことをすぐチャラにする。こないだと言うことが違うじゃねーかよということがしょっちゅうある。TPP断固反対、ブレないとか言ってた自民党がTPP妥結しちゃう。本来ならばメディアがそういう朝令暮改を追及しないといけないのに、おしょくじのけんのおかげで全然ダメ。新聞からして読売や産経はこの体たらくです。

 改めて「言質を取る」ということの意味を確認しておかねばなりませんね。


 なお、私自身は、検察は甘利明を捜査すべきだと考えます。今回の件は小沢とは比較になりません。政治とカネなんて思考停止のマジックワードで一緒くたにできるようなレベルじゃない。

 一つすごく心配なのは、くだんの秘書が家族もろとも消息不明という情報があること。不吉な予感がします。


 

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