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ssh326 1Q84と読売日本とトヨタ主義人民共和国(4) [三題噺]

<2010>

 

◆◆ 10日午後4時30分、永田町民主党本部は記者、スチール、ムービーのカメラマンでひしめき合っていた。間もなくヤワラちゃんこと谷亮子選手(トヨタ)の参院選立候補表明の記者会見が開かれるからだった。

 オリンピックで2度も金メダルを獲得するなど世界女子柔道のトップランナーを務めてきた谷選手の政界転出は話題性抜群だ。報道陣の熱気とライトで室温が急上昇するため、広報部職員は冷房のレベルを上げた。大変な気の使いようだ

 同日の午後、愛知県のトヨタ本社には、ラフード米運輸長官が視察に訪れていた。米国での大量リコール問題に対応するためトヨタが同長官に訪問を要請したのだった。

 豊田章男社長と共同記者会見したラフード長官のコメントは、トヨタにとって厳しいものだった「トヨタから提出を受けた15万ページの資料を精査中」であることを明らかにし「(新たな)制裁金が必要なら誰も分かる。安全が最優先課題なので我々は最大限の努力をする」と述べた。追加制裁金を課す可能性もあることを示唆したのである。トヨタはすでに米運輸省から15億円もの制裁金を課せられている。 米国世論に一喜一憂するトヨタだが、日本国内のマスコミ対策は完璧だ。トヨタの広告費は年間880億円にも上る。新聞、テレビ、週刊誌などの有名媒体はじめ、印刷部数がわずか2~3千部の専門誌にまで広告を出している。

 ある有名週刊誌が「働き易い日本企業ベスト10」を企画したところ、トヨタのランクが低かった。ゲラまで出来あがっていたのだが、編集長判断で差し替えた。マスコミがトヨタの機嫌を損ねないようにと苦心するケースは枚挙に暇がない。

 トヨタに詳しいジャーナリストによると、トヨタがマスコミに直接圧力をかけてくることはない。広告代理店があれこれと口を出してくる、という。

 新聞、テレビ、雑誌、いずれの媒体も不況で苦しい。トヨタが広告を引き揚げれば大幅収入減となり、経営は一段と苦しくなるだろう。

 外交問題にまで発展しかねない大量リコール問題で、米運輸長官がトヨタを訪れて追加制裁も示唆したその日、夕方のテレビニュースのトップは各局とも「谷選手出馬」だった。「ラフード長官の発言」はその後で扱いは小さかった。「田中龍作ジャーナル」より◆◆


 

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ssh325 1Q84と読売日本とトヨタ主義人民共和国(3) [三題噺]

<2010>

 

 「野球は巨人」というのが読売日本国のイデオロギーであるとすれば、「クルマはトヨタ」というのも、ある種のイデオロギーであると言えないでしょうか?

 いえ、別にトヨタのクルマがダメとか、トヨタという会社が悪徳企業だとか、そーゆーことを言いたいんじゃないんです。巨人の選手がひたむきにプレーするように、トヨタの社員もひたむきに仕事に打ち込んでいます。

 それでも、やっぱりヘンなことがある。

 

 先日、私の義母がこんなことを言いました。「何かトヨタはプリウスのリコールとか大変みたいだけど、何で急にあんな風になったのかねえ?」

 急じゃないですよ、お義母さん。他の自動車メーカーと同様に、トヨタもリコールはいっぱいしてきているんです。

 

 トヨタのリコール数はダントツの日本一です。

 ま、これはある意味当然です。何せ日本一どころか世界一クルマを生産販売している会社なんですから。

 手元の資料によりますと、200105年にリコールとなったトヨタ車の台数は529万台。2位の三菱が300万台というのがシェアの割には高いなあとは思いますが、この時期の三菱はグループ内のふそうも含めてリコール隠しだの車輪脱落だのと言語道断なことをやっていた時期です。あと、3位ホンダ(280)4位日産(230)と続きます。

 まあつまり、トヨタも他のメーカーと同程度かそれ以上くらいにはリコールをしていたんです。


 

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ssh324 1Q84と読売日本とトヨタ主義人民共和国(2) [三題噺]

<2010>

 

 同じ時間空間を共有しているようでいて、実はお互い違う世界に住んでいる。というオバQ84じゃなくて『1Q84 』的世界を、村上春樹よりはるか前に私に提示してくれたのがえのきどいちろう氏でした。

 10年ばかり前のことです。当時私は自動車雑誌『NAVI』を定期購読していました。(NAVI』、先日休刊になったんですね。淋しいことです。)そこにえのきど氏がエッセイを連載していました。自動車雑誌なのに自動車とあまり関係ない話ばっかりでしたが、面白くて毎回欠かさず読んでました。

 

 で、ある月のエッセイの題名が「読売日本」。

 話のきっかけは読売日本交響楽団の名前を見て、はて、この読売日本ってどういう意味かいな?と思ったと。もちろんこれ、読売新聞と日本テレビのオーケストラのことなんですが、このエッセイはそこから一気に1Q84的世界に突入します。

 読売日本という国が本当にある、というお話に。

 

 えのきど氏は北海道日本ハムファイターズの熱烈なファンです。正確にはファイターズが東京を本拠地にしていたころからのファン。

 北海道に移る以前、ファイターズは東京読売巨人軍つまりジャイアンツと本拠地球場を共用していました。昔のパ・リーグはホントに人気なくて、観客も少なけりゃTV放映も全然ない。

 ファイターズのロッカールームはジャイアンツのそれの奥にあったそうです。しかしまー、いやらしいことしますな。

 

 今でこそジャイアンツ人気はずいぶん下火になりましたが、かつては「野球は巨人」というのがほとんど社会常識でした。何せ、TVでは優勝争いと全く関係のない巨人戦だけが中継されていたんですから。他チームの優勝が決まっていても、巨人の消化試合が中継された。今じゃ信じられませんよね。

 だから、巨人以外のチームのファンであるというのは、奇妙なことと理解されていました。


 

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ssh323 1Q84と読売日本とトヨタ主義人民共和国(1) [三題噺]

<2010>

 

 まったく読んでないんですよ、『1Q84』。

 何を隠そう、私は名作オンチでして、名作とか古典とかベストセラーとか言われる小説を読んだことがほとんどありません。

 いや実は、そもそも小説ってほとんど読まないんですよ。

 なぜ?ってよく聞かれるんですけど、「楽しくないから」としか答えようがなくて。恥ずかしげに。

 な~んかねえ、小学校時代の「みなさん、本を読みましょう!」というアレがいまだに原罪意識みたいに抜けないんですよ。

 いや、書籍を読むのはキライじゃないんですよ。でも、私が好んで読むのは評論とか技術論とか図鑑とか辞典とか、そんなのばかりで。小学校以来「読書=物語を読むこと」と信じ込んでしまった私は(単にそういうものを読まない罪悪感かコンプレックスのせい)、とある出版社の面接試験で「最近読んだ本は何ですか?」と聞かれて「読んでません」と答えて落とされた経験すらあります。本は読んではいたんですけど小説じゃなかったもので、ついコンプレックスが出てしまって。

 

 実を申すと『1Q84』の第1巻が出た時、本気で「アイキュー84」だと思ったんですよ。知能指数にまつわるお話かと。

 で、その後あちこちの書店で平積みの『1Q84』を見ているうちに、装丁のあのQの字が『オバケのQ太郎』みたいに見えてきちゃって(似てるでしょ?)「オバQ84」とか勝手に言ってました。

 

 そういう極めて不真面目な輩なので、その内容はごく最近までまるで知りませんでした。 『1Q84』って、同じ世界の住人だと思ったら実は住んでる世界が違うってお話だったんですか。高橋源一郎氏が『Sight』の鼎談で話しているのを読んでようやく理解しました。

 彼によると、勤務先の大学の学生と自分とでは、物理的には同じ時間と空間に生きているのだけれど、感覚や背負っているものが全然違っている。そのギャップに当惑していたけれど、彼らが1984年ではなく1Q84年の住人なのだと考えるとすごくつじつまがあってきたと。

 

 分かりやすい話、私の眼に写っている王貞治と、35歳以下の人の眼に写っている王貞治と、高校生の眼に写っている王貞治は、まったく別のものであるわけです。

 

 

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ssh119 ヤンキー先生と民間人校長と矢ガモ(4) [三題噺]

<2007>

 実は、私の勤務する県にも、鳴り物入りで採用されたお二方の民間人校長がおります。
 ただ、その評価は結構対照的なようです。

 考えてみれば、民間人出身なら必ず学校運営がうまくいくなんて、そんなことあるハズもないでしょう。全国的に見ても、民間人校長の評価は、まったく個々バラバラなようです。
 つまり、いい人はいいし、そうじゃない人はそうじゃない。うんと評価される人もいれば、任期中途でケツまくっちゃった人もいます。
 名選手、必ずしも名監督ならず。民間人校長、必ずしも名校長にあらず。

 当たり前です。
 どんな仕事だって、元○○なら必ずいい××になれるなんて、そんな甘いもんじゃないです。

 私はssh115で、ヤンキー先生が10年20年と現場で教員を続けて、なおかつヤンキー先生と呼ばれるものだろうかと書きました。 
 ssh116では、矢ガモは矢が抜けたら誰にも注目も同情もされないというコメントを紹介しました。
 ssh118では、私はこう断言しました。
 「民間人校長は民間人ではありません。民間人校長は校長先生です。」

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ssh118 ヤンキー先生と民間人校長と矢ガモ(3) [三題噺]

<2007>

 さて、残るは民間人校長のお話。
 
 しっかし、民間人校長って、それにしても珍奇な名称ですな。
 イラク戦争のニュースで、民間人に死者が出たという報道が(切ないことに)よくされますが、教員は民間人じゃないんだ。じゃあ戦闘員?
 民間人校長って、戦争に参加しない校長先生?
 と、もちろんこれは冗談。

 民間人校長の民間人ってのは、非公務員ってこと。
 公務員以外のお仕事から転身というか転職した方のこと。
 今のところ民間人校長は会社員や実業家からの転職組ばっかりだけど、リクツの上では、スポーツ選手や農業・漁業や職人やタレントからの転職もありうる。

 ただし。
 民間人校長は、民間人ではありません。

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ssh116 ヤンキー先生と民間人校長と矢ガモ(2) [三題噺]

<2007>

 若い人なら誰も知らない「矢ガモ」事件。
 90年代に東京で見つかって話題になった、ボウガン(ライフルみたいなカッコした強力な弓矢)の矢が刺さったまま都内をうろちょろしていたカモのことです。
 この少し前にカルガモブームってのがありました。カルガモの親子が車道をとっとこ一列縦隊で行進してるのが、連日テレビで流されてました。

 この矢ガモ、当たりどころが良かったと言うか半端だったと言うか、矢が刺さったままで結構ちゃんと活動していたらしいです。空は飛べなかったような記憶がありますが。
 
 一般的なテレビのコメントは、まあ以下のような(ありきたりの)もの。
 「残酷なことをする」
 「非常識だ」
 「動物愛護の精神に反する」
 「近頃頻発している猟奇的な事件にも通じるものがある」(今でも使えそうなコメントですな)

 で、この時ひとり、冴えたコメントをしていたのがビートたけし。
 「けどさあ、矢ガモって矢が刺さってるから矢ガモなんだよな。もし矢が刺さってなけりゃただのカモで、誰も注目も同情もしないじゃん。」

 話はここからさらに、主題たる「民間人校長」へと続きます。

 さて、ここで問題。
 ssh115&116の内容からして、私は「民間人校長」をどう論じるつもりでしょうか?

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ssh115 ヤンキー先生と民間人校長と矢ガモ(1) [三題噺]

<2007>

 いやあ、参議院選の立候補を受諾しちゃいましたねえ、義家弘介サン。
 某全国紙の投書欄には、この件をもって教育再生会議の中立性は信用できないという旨の投書が載ってました。与党の立候補要請を受諾するような人をメンバーに選んでたなんて、ハナっから出来レースじゃねえかっていうご指摘ですね。ま、そう言われても仕方ないわな。

 ところで、「ヤンキー先生」って、元ヤンキーの先生って意味ですよね。義家サンはもう現職の教員じゃないから、正確には「元ヤンキー先生」か。
 もしめでたく参議院選に当選したら、ヤンキー→先生→教育再生会議委員→参議院議員ってことで、長〜い肩書きになっちゃいますな。
 あ、議員サンも「センセー」って呼ばれるじゃん。
 じゃあ、当選したら、今度こそ正真正銘の「ヤンキーセンセー」だ。

 って、ふざけてる場合じゃない。
 
 今、仮に、どこぞの学校に元ヤンキーの先生がいたとしましょう。
 最初のうちは、物珍しさやら若さやらで「わが校のヤンキー先生」なんて呼ばれる可能性大です。
 しかし、その人がその後も(例えばタレントや議員なんぞに転身することもなく)10年とか20年とか、地道に現場勤めを続けたとしましょう。
 
 その人は、それでも「ヤンキー先生」って呼ばれるのでしょうか?
 話はここから「民間人校長」と「矢ガモ」へと発展します。以下次号。
 (なお、「矢ガモ」というのは、1990年代に話題になった、ボウガンの矢が刺さったまま都会をうろちょろしていたカモのことです。)

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