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ssh687 社説の読み方〜沖縄県知事選編(2)辺野古移設再考2紙+αの社説  [社説の読み方]

<2014>

 

 それでは、読売・産経・日経と対極の主張をする2紙の社説を見てみましょう。

 

 まずは朝日クン。この日の社説は単一展開、すなわち通常の倍の紙幅を充てるリキの入れようです。(引用文中の太字はすべてshiraによります)

◆◆沖縄県知事選辺野古移設は白紙に戻せ

 沖縄県知事選で、新顔の翁長雄志(おながたけし)氏(64)が現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)氏(75)らを大差で破り当選した。「これ以上の基地負担には耐えられない」という県民の声が翁長氏を押し上げた。

 最大の争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非だった。1月の名護市長選、9月の同市議選に続き、知事選も移設反対派が制したことで、地元の民意は定まったと言える。

 「沖縄に寄り添う」と繰り返してきた安倍政権である。辺野古への移設計画は白紙に戻すしかない。

「保革」超えた動き

 政権側は辺野古移設を「過去の問題」として、知事選での争点化を避けようとした。

 だが、翁長氏は「あらゆる手法を駆使して辺野古に新基地をつくらせない」と主張。仲井真氏は「一日も早い普天間飛行場の危険除去には、辺野古移設が具体的で現実的な方策」と応じた。民意は翁長氏についた

 県民にとって、今回の知事選には特別な意味があった。

 普天間飛行場の海兵隊は、山梨県や岐阜県の基地から、米軍政下の沖縄に移ってきた。米軍は「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる強権的手段で住民の土地を奪い、基地を建設した。

 そして、国土の0・6%の沖縄に、全国の米軍専用施設の74%が集中する不公平

 「基地は県民が認めてできたわけではない。今回、辺野古移設を受け入れれば、初めて自ら基地建設を認めることになる。それでいいのか」。県内にはそんな問題意識が渦巻く。

 それは「本土」への抜きがたい不信であるとともに、「自己決定権」の問題でもある。自分たちが暮らす土地や海、空をどう使うのか、決める権利は本来、我々にこそある、と。

 前那覇市長で保守系の翁長氏は「イデオロギーでなく沖縄のアイデンティティーを大切に」と訴え、保守の一部と革新との大同団結を実現した。とかく「保革」という対立構図でとらえられがちだった沖縄の政治に起きた新しい動きだ。


 

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ssh686 社説の読み方〜沖縄県知事選編(1) 辺野古移設推進3紙の社説  [社説の読み方]

<2014>

 

 任期満了に伴う沖縄県知事選挙が1116日に行われました。

 子どものころ「任期満了」って言葉がわからなくて、選挙ってのは「人気」と関係があるのかなと思ってましたっけ。

 そーゆーくだらんことは置いといて。選挙結果はご存知の通り、前那覇市長の新人・翁長雄志が現職の仲井真弘多らを破り当選。有効投票数の過半数を獲得したのだから、完勝と言って差し支えないでしょう。

 

 この選挙への関心は中央メディアも非常に高いようで、珍しく5紙が16日朝刊で同時に社説展開しています。ssh的には大変にありがたい展開。しかも主張が真っ二つに割れるという美味しさであります。

 

 せっかくのいいネタなので、2回に分けて記事化させていただきます。

 前半では、翁長当選に眉をひそめる辺野古移設推進派の3紙にご登場願いましょう。と言っても、実はこの3紙、内容に大きな違いはありません。なので、3紙まとめて論評させていただきます。(文中の太字部分はshiraによります。)


 まずは読売クン。日ごろ慎重な言葉遣いの読売クンらしからぬ、朝日「誤報」批判の時のような威勢のいい文面です。

◆◆沖縄県知事選 辺野古移設を停滞させるな

 曲折の末、ようやく軌道に乗った米軍普天間飛行場の移設を停滞させてはならない。新知事に慎重な対応を求めたい。

 沖縄県知事選は、翁長雄志・前那覇市長が現職の仲井真弘多氏らを破って初当選した。

 選挙では、普天間飛行場の名護市辺野古への移設の是非が最大の争点とされた。

 元自民党県連幹事長の翁長氏は「移設反対」を唱え、共産、社民など革新政党との保革共闘によって、幅広い支持を集めた。

 自民党推薦の仲井真氏は、「普天間問題の一日も早い解決」を最優先課題に掲げ、「移設容認」の立場を鮮明にした。

 仲井真氏が昨年末、移設先となる辺野古沿岸部の埋め立てを承認したのは、住宅密集地にある普天間飛行場の危険性の早期除去を重視したゆえの決断だった。

 移設予定地は市街地から遠く、騒音や事故の危険性が現状に比べて格段に小さい。沖縄全体の基地負担を大幅に軽減しつつ、米軍の抑止力も維持するうえで、最も現実的な方法なのは間違いない。

 知事選では公明党が、辺野古移設に反対する県本部を説得できずに自主投票としたが、与党の対応として疑問が残った。与党時代に辺野古移設を決めた民主党の自主投票も、無責任だった。

 翁長氏は長年、辺野古移設を容認していたが、民主党の鳩山政権下で反対に転じ、県外移設を主張している。今回、「新辺野古基地は絶対に造らせない」と訴えながら、具体的な代替案を示さなかったのは責任ある態度ではない。

 普天間飛行場の移設が滞れば、「2022年度以降」とされた返還が実現せず、危険な現状の長期固定化を招く恐れがある。他の米軍基地の返還も遅れるだろう。

 この問題にどう対処するか、翁長氏は見解を示すべきである。

 翁長氏は当選を決めた後、埋め立て承認の「取り消し、撤回に向けて断固とした気持ちでやる」と語った。だが、法的に瑕疵(かし)のない承認の取り消しなどは困難だ

 防衛省は現在、仮設道路の追加など埋め立て工事内容の一部変更の承認を県に申請している。

 翁長氏が徹底的に移設を阻止しようとすれば、政府との対立は避けられない。その場合、年3000億円台の沖縄振興予算をどうするか、という問題も生じよう。

 翁長氏も現実路線に立ち、政府との接点を探ってはどうか。

 政府・与党は、翁長氏の出方を見つつ、辺野古移設の作業を着実に進めることが肝要である。◆◆


 

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ssh684 社説の読み方〜捏造だという捏造編 [社説の読み方]

<2014>

 

◆◆首相の発言 「捏造」は看過できない (2014111日 朝日新聞社説)

 NHKやネットで中継されている国会で、首相が特定の新聞社の報道を取り上げ、「捏造(ねつぞう)」だと決めつける。

 いったいどこの国の話かと思わせる答弁が続いている。

 おととい(注:1030)の朝刊で朝日新聞は、安倍首相と自民党議員との昼食会の模様を報じた。

 その席で、民主党の枝野幹事長の政治資金収支報告書に収入の不記載が見つかったことが話題になった。政治とカネをめぐる野党の追及について、安倍氏がこれで「撃ち方やめ」になればと語ったという内容だ。

 その枝野幹事長が衆院予算委で事実関係をただすと、首相はこう答えた。

 「きょうの朝日新聞ですかね。これは捏造です」

 驚くべき答弁である。なぜなら、毎日、読売、日経、産経の各紙や共同通信も「撃ち方やめ」を首相の発言として同じように伝えていたからだ。枝野氏も、朝日の報道に限って質問したわけではない。

 首相は「私が言ったかどうか問い合わせがないまま、言ってもいない発言が出ているので大変驚いた」と述べた。

 だが、各紙の報道は、昼食会に出席した首相の側近議員による記者団への説明に基づいている。この議員の事実誤認であるなら、そう指摘すればいいではないか。実際、この議員は後に「『撃ち方やめ』は自分の言葉だった」と説明を修正した。

 首相はまた、「朝日新聞は安倍政権を倒すことを社是としているとかつて主筆がしゃべったということだ」とも語った。

 それが朝日新聞だけを名指しした理由なのか。

 権力監視は民主主義国の新聞として当然の姿勢だ。それでも時の政権打倒を「社是」とするなどばかげているし、主筆がしゃべったというのも、それこそ事実誤認の伝聞だろう。

 朝日新聞は慰安婦問題や福島第一原発事故の吉田調書について一部の記事を取り消し、その経緯を検証している最中だ。だが、それと政権に対する報道姿勢とは別の話である。

 メディアを選別し、自身に批判的な新聞に粗雑なレッテルを貼る。好悪の感情むき出しの安倍氏の言動は、すべての国民を代表すべき政治指導者の発言とはとても思えない。

 予算委で安倍氏は、閣僚の不祥事を追及する野党議員に対し、「公共の電波を使ってイメージ操作をするのはおかしい」と反論した。

 では、問いたい。「イメージ操作」をしようとしているのはどちらなのか。◆◆

 

 コトの発端は、1030日に中央5紙すべてと共同通信および共同通信から配信を受けた多くの地方紙が、太字のような報道をしたということ。

 それそのものは、自衛隊の戦車にミリタリールックで乗り込んではしゃいでみせた晋三坊ちゃまらしい発言であります。

 ところがそれに対して、坊ちゃまが太字のようなことを言ったのですね。それも国会答弁で。

 

 その後、「側近」とやらが、あの発言は首相本人のものではないと弁明した。それでコトは終わるのかと思いきや、坊ちゃまは自身の発言を撤回も訂正もせず、もちろん謝罪なぞせず開き直ったのですな。

 その辺の経緯は次の文面に詳しいです。


 

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ssh667 4年前のW杯社説を復習しましょう [社説の読み方]

<2014>

 

 負けちゃいましたね、W杯サッカーの日本代表の初戦。いや残念。

 とは言え、大会は始まったばかり。予選リーグはあと2試合残ってます。頑張って欲しいものです。

 

 にしても、マスメディアの冷たさと来たら、ずいぶんなものですな。

 お定まりの監督批判に留まらず、選手に対してもかなり辛辣です。

 前回(2010)がベスト16ですから、今回はそれ以上を望むのが人情というものではあるでしょうけれど、それにしてもまーあっさりと手の平をひっくり返すもんですな。

 

 手の平ひっくり返しですぐに思い出されたのが、4年前。

 

◆◆ 

 2010ワールドカップサッカー南アフリカ大会、全日本は初戦のカメルーン戦に勝ったそうですね。615日朝のフジテレビ「めざましテレビ」で知りました。(中略)

 しかしまあ、岡田監督を鳩山元首相と並べて揶揄して喜んでいた中央メディアのみなさま方の、手の平のひっくり返しようはどうです?まー臆面もなく恥ずかしげもなくいけしゃあしゃあと。

 中央メディアってのは気楽な商売ですな。道理でみんなTVタレントや局アナ(局アナもタレントの一種か)に憧れるわけだ。

 気楽っつーたら、手の平ひっくり返しよりももっとずーっとお気楽なのが、数々の勝因分析でしょう。

 岡田采配が的中しただの、テストマッチの敗戦で危機感を持っただの、あげくにゃみんなで肩組んで君が代斉唱したのがどーだのと。歌で勝てりゃ誰も苦労しないわ。(ssh338 あとから理由を探すのはバカでもできる、そんなものは論考でも論評でもない)◆◆

 

 批判から賞賛へという正反対のひっくり返しではありますが、変わり身の早さはこの頃から健在です。イソップ物語のコウモリもタジタジという感じ。

 

 せっかくですんで「カンドウヲアリガトウ」一色に染まったこの時の中央紙の社説も紹介しておきましょうか。(ssh346 社説の読み方~みんなでホメよう岡田ジャパン編)


 

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ssh651 社説の読み方番外編〜ソチは北カフカスです [社説の読み方]

<2014>

 

◆◆冬季五輪が始まるロシア南部・ソチについて日本メディアで誤解が横行している。「北カフカス地方に近い」などとされるが、ソチ自体が正真正銘の北カフカスなのである。

 おさらいしよう。カフカスとは「黒海とカスピ海に挟まれアジアとヨーロッパの境とされたカフカス山脈を中心とする地域(『ロシアを知る事典』)だ。ロシアに属するカフカス山脈北側を、グルジアなど独立諸国のある南部と区別し「北カフカス」という。

 ソチのあるクラスノダール地方が北カフカスに入るというのはロシア人の間では常識だ。カフカス地域に詳しい前田弘毅・首都大学東京准教授は「ナンセンスな話」とあきれる。「言語、文化的にもソチのあるクラスノダール地方は北西カフカスで、チェチェンやダゲスタンは北東カフカスです」

 誤解には理由がある。ロシア政府が二〇一〇年、初めて「北カフカス」と銘打った「連邦管区」をクラスノダールなど黒海側の自治体を除外して創設したからだ。日本にたとえると、仮に茨城県を除外した「関東管区」が新設され外国メディアが「水戸は関東地方に近接している」と書いたようなものだ。

 五輪都市ソチがあるクラスノダールを、紛争のイメージが強い「北カフカス」から切り離そうとする狙いがあるとすれば、日本メディアは、クレムリンの情報操作に見事に引っ掛かったことになる。(東京新聞「私説・論説室から」2014.2.3.)◆◆ 

 

 へえ、そうなんですか。

 意地の悪い私としては、どのメディアが「クレムリンの情報操作に見事に引っ掛かった」のかを確かめたくなりました。

 毎度おなじみ中央5紙でチェックしてみましょう。

 

 まずは読売クン。(太字はshiraによる)

 

◆◆冬季五輪の舞台となるソチに近いロシア北カフカス地方は、テロを引き起こすイスラム過激派の根城とされる

 一方、帝政時代からこの地方を守ってきたコサックの子孫も多く、テロ防止のため自警団による夜警を始めた。ソチ市内でも800人以上が警備にあたっている。(ロシア南部ピャチゴルスク 緒方賢一、ソチ 田村雄)

 「テロの後は毎日午後6時から午前1時まで地区内を歩いて警戒している」。ピャチゴルスク中心部から南に約20キロのタンブカン地区で、コサックの公務員ゲンナジー・クレシュノフさん(43)が強調した。(読売新聞2/7)◆◆

 

 あらま、かなり見事にクレムリンの思惑通りの表現となってます。読売クン、案外ロシアが好きなのかしら。完全にアウトですね。クレムリンの情報操作に引っ掛かったと認定。

 引用には載ってませんが、読売クンのこの記事は地図が付いてました。地図はロシア当局が定めた北カフカス連邦管区をそのまま書いてあり、ソチはその連邦管区北の外になっています。ロシア当局に対して最も忠誠心が強いのが読売クンです。

 

 

 お次は日経クン。


 

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ssh621 社説の読み方〜体感治安と風評被害編 [社説の読み方]

<2013>

 

 本年度の警察白書が発表されました。

 それによると、日本の犯罪は減少の一途。いや~、実に結構なことです。暗いニュースが多い中、めでたい話です。株価と違って犯罪は右肩下がりに減ってくれればこんないいことはありません。

 あの東京オリンピック招致委員会だって「日本は治安がいい」をセールスポイントにしてます。日本の治安の良さは国際的にアピールすべき事実なのです。

 

 今回、警察白書ネタを社説展開したのは読売クンと日経クンの2紙のみ。そりゃそうでしょうね。いいことをネタにするのはブン屋さんの苦手分野でしょう。内容はほとんど同じでした。

 しかしその内容は、ssh的には看過できないものがあります。今回は読売クンを俎上に載せて、その問題点を指摘しておきたいと思います。

 

 まずは警察白書の社説。

 

◆◆警察白書 犯罪抑止は迅速な対応から(86日付・読売社説)

 犯罪の摘発は警察の重要な責務だ。併せて、犯罪の未然防止に全力を挙げることが治安を守る上で欠かせない。

 刑法犯は減少の一途である。昨年の認知件数は138万件で、ピークだった2002年の半数にも満たない。防犯カメラや警報装置の普及で、空き巣や車上荒らしなどの窃盗が減ったのが大きな要因だ。

 ところが、内閣府の世論調査では、8割の人が「治安は悪化した」と回答したという。今年の警察白書は、犯罪件数の減少と国民意識の食い違いについて、「子供、女性、高齢者」が被害者となる事件が目立つため、と分析している。統計を見る限り、もっともな指摘である。

 子供に対しては虐待が絶えない。児童虐待の摘発は昨年、472件で最多となった。被害者のほとんどが女性である家庭内暴力(DV)の認知件数は約4万4000件、ストーカーは約2万件に上り、いずれも最多である。高齢者は、振り込め詐欺や悪質商法の標的になっている。

 警察が迅速に動けば、これらの被害の深刻化を防ぐことができるだろう。犯罪抑止力を警察全体として高めることが肝要だ。手段の一つとして、白書は全国の警察署にある相談窓口の強化を打ち出した。窓口を地域の安全を探るアンテナとして使い、犯罪防止に努める試みだ。多種多様な相談に対処できる担当者を育成するという。教育委員会や児童相談所、消費生活センターなど、関係機関との緊密な連携もうたっている。

 長崎県西海市のストーカー殺人事件では、被害者側からの度重なる相談に適切に対応せず、最悪の事態を招いた。白書が「刑罰や法令に抵触しない場合でも、必要に応じて相手側への指導・警告を行う」と改めて強調したのは、こうした失態からの教訓と言えるだろう。身に危険を感じている人の訴えに、真摯に耳を傾けることが何より重要である。

 相談業務を充実させるには課題もある。恒常的な人手不足の中、どれほどの警察官を投入できるのか。電話相談用の全国統一番号を周知するなど、効率的な相談対応に努めてもらいたい。寄せられた深刻な相談内容については、都道府県警本部や各署で情報を共有することが必要だ。

 不祥事が続く警察の信頼回復のためには、迅速な対応で住民の安全を守ることが求められる。◆◆


 

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ssh580 社説の読み方〜公務員の機関紙配布裁判編 [社説の読み方]

<2012>

 

 選挙シーズンたけなわです。

 私のような教育公務員の場合、選挙シーズンが近づくと当局からお達しがあります。公務員の政治活動は法的に制限されており、それに抵触するような行為はしないようにと。

 ま、実際に市町村や都道府県の首長選挙だと現職候補の応援に組織的に動いてお縄になったというケースもあります。ただそれは現職が落ちた場合の話で、現職が当選するとあまり摘発はされないのですね。私の地元でもそんなケースがありました。不可解なり、我が祖国。

 

 さて、国家公務員が休日に「しんぶん赤旗」を配布したのは違法か否かという裁判の最高裁判断が出ました。コトは2003年と2005年に、当時の厚労省課長と社保庁のヒラ職員がそれぞれ別個に赤旗の号外を休日に配布したというもの。最高裁の判断は、課長は有罪、ヒラは無罪。

 この件について即日社説展開した中央紙は3紙。しかも意見は真っ二つに割れております。意見が割れるのはssh的には大変ありがたい展開。ということで記事化させていただきます。

 

 

 今回はちょっと趣向を凝らして、私が3人の答案を順番に採点しながらあれこれ言っているという設定で行きたいと思います。私は多い時は300枚以上採点しますけど、2枚以上同時に読むことはできませんので、こんな風に11枚読んでチェックしているのだとお考えください。なお順番はまったく偶然によるものです。

 

 

 さ~て、それじゃ採点と参りますか。最初の答案はと・・・おお、読売クンか。

 

◆◆政党紙配布判決 公務員の中立を乱さないか(128日読売)

 法的に禁じられている国家公務員による政党機関紙の配布について、最高裁は、場合によっては罪に問われることはないとの判断を示した。

 国家公務員の政治活動の範囲が、なし崩し的に広がらないか、懸念が拭えない判決だ。

 過去の衆院選で、共産党機関紙の号外を休日にマンションなどに配布したとして、元厚生労働省課長補佐と元社会保険庁職員が国家公務員法違反に問われた。

 最高裁は、元厚労省課長補佐を有罪、元社保庁職員については無罪とする判決を言い渡した。

 国家公務員法は、職員の政治的行為を制限し、それに基づく人事院規則が、政党機関紙の配布を明確に禁じている。

 判決がまず、国家公務員について、「政治的に公正かつ中立的立場で職務の遂行に当たることが必要」と指摘したのは当然だ。

 だが、その先の最高裁の判断には疑問符が付く。

 今回の裁判で、最高裁が重視したのは、2人の地位だ。有罪となった元厚労省課長補佐は、管理職的地位にあり、政治活動をすれば、他の職員の業務にも影響を及ぼし得る、との見解を示した。

 一方、窓口相談などを担当していた元社保庁職員は管理職でなく、政治活動が職務に影響することはない、と判断した。

 この見方は、一面的ではないか。地位にかかわらず、職場に強い影響力を持つ職員はいるだろう。例えば、官公庁の労働組合の幹部は管理職ではない。

 どんな場合に政治活動が違法となるかについて、最高裁は、公務員の地位や権限を総合判断し、「行政の中立的運営に実質的に影響を及ぼす場合」との見解を示した。この線引きもあいまいだ。

 最高裁は1974年、国家公務員の政治活動について、「地位や職種に関係なく政治的行為を禁じることは憲法に違反しない」と判断した。この判例との整合性でも理解しにくい面がある。

 今回の判決により、管理職に就いていなければ、政治活動が許されるという解釈が広がる恐れもある。政権政党に、国の機関の職員がビラまきなどで協力するような事態も考えられる。

 教育現場への影響も心配だ。教員は国家公務員並みに政治活動が制限されている。民主党との癒着が批判された北海道教職員組合の政治資金規正法違反事件のようなケースが起こりかねない。

 やはり、公務員の政治活動は、厳格に規制されるべきだ。◆◆

 

 ん~、悪くないじゃない。


 

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ssh570 社説の読み方〜さらば都知事編 [社説の読み方]

<2012>

 

—112日付訂正あり

 

 新聞を読むことは国語力向上に有効。社説は小論文のいいお手本。という通説がいかにアテにならないかを示してしまっているssh「社説の読み方」シリーズ。

 今回のネタはssh認定「人間のクズ」第1(ssh434)石原慎太郎が都知事を任期中途でおっ放り出して国政進出を表明したという例の件です。果たして今回の中央5紙社説の出来映えやいかに。

 

 

 では参りましょう。今回は石原慎太郎応援レベル順です。トップバッターは最高レベルの熱烈応援を送る産経クン。

 

◆◆石原新党 新憲法への流れ歓迎する 首相は年内解散を決断せよ(2012.10.26. 産経)

 石原慎太郎東京都知事が知事を辞職し、新党を結成した上で国政に転じる意向を表明した。

 石原氏は占領下に制定された現行憲法を「解決しなければならない主要矛盾」と指摘し、新しい憲法を作るべきだと訴えた。官僚制の打破とともに、憲法改正を次期総選挙の最大の争点に据えて戦う意思を強調した。

 現在の政治の閉塞(へいそく)状況を転換しようとする石原氏の行動を高く評価したい。氏が投じる一石は、新たな政治状況をダイナミックに創出する意味を持ち、憲法改正を求める保守勢力を結集する重要な核となり得るからだ。

 

 ≪権利義務の均衡を欠く≫

 野田佳彦首相も「私は新憲法制定論者」と自著で語っていた。石原新党を機に、国家的課題の解決に向けて、衆院の年内解散・総選挙を速やかに決断するときだ。

 石原氏は現行憲法の矛盾点として、国民の意識に絶対平和という共同幻想を植え付け、権利と義務のバランスを失した「権利偏重」の規定が「日本人に我欲を培い、利己的にした」と指摘した。

 今年5月3日の憲法記念日までに、自民党は自衛隊を「国防軍」とし、石原氏と行動をともにする「たちあがれ日本」は「自衛軍」とするなど、それぞれの憲法改正案を公表した。「みんなの党」も「自衛権の在り方」を明確化するとしている。

 橋下徹大阪市長率いる「日本維新の会」も憲法改正を必要とする首相公選制などを打ち出した。にもかかわらず、民主党は平成17年に国民的議論の素材となる「憲法提言」を策定して以降、新たな憲法案を出していない。

 これらの問題提起を野田政権も真剣に受け止め、早急に具体的な改正案をまとめる必要がある。

 最近の中国による海軍力の誇示や尖閣奪取を狙う度重なる領海侵犯、北朝鮮の核・ミサイル実験などをみれば、「平和を愛する諸国民の公正と信義」をうたう現行憲法がもはや通用しないことは、誰の目にも明らかだ。

 石原氏は、激しい時代の変化にも対応できる官僚システム作りの必要性も強調した。中央官僚は「継続性にこだわり、重要課題を先送りしてきたため」、いまだに尖閣諸島に大きな灯台や漁船が避難する船だまりもできていない事実を挙げ、この問題では自民党と協力する考えも示した。

 自民党の安倍晋三総裁は尖閣に公務員を配置する方針を打ち出している。野田政権は尖閣を国有化した以外は中国に配慮し、何もしていない。尖閣をいかに守るかの具体策を行動で示すべきだ。

 石原都政は足かけ14年に及ぶ。3期12年間に行われた都立高学区制全廃や国旗・国歌の指導徹底、道徳教育の充実などの教育改革は高い評価を得た。4期目の今年は「尖閣諸島を都が購入する」と発表し、尖閣国有化という重要な国策の決定につながった。

 

 ≪残された課題引き継げ≫

 だが、4期目は大規模災害やテロなどの緊急事態の際、都民の安全や首都機能をいかに守るかの危機管理・防災対策など難題が山積していた。東京五輪再招致の課題もある。

 辞任はこれらを途中で投げ出したと受け取られかねない。石原氏はこうした批判に応え、残された課題の引き継ぎもおろそかにしてはなるまい。

 石原氏が橋下氏との「連携、連帯」を強調しつつ新党結成を打ち出したことは、政界流動化の加速につながる可能性が高い。

 離党者が相次ぐ民主党は、衆院の単独過半数(239人)割れまで6人に迫り、国民新党(3人)との統一会派によって危機をしのごうとしている。だが、既に衆院議員の残り任期が10カ月余となった中で、野田政権は懸案を解決できず、国民の支持を失った。

 与党から石原新党への参加者が相次ぐ可能性も否定できない。過半数割れで内閣不信任決議案が可決され、首相が解散か総辞職を迫られる事態も想定される。

 離党者を防ぎ、政権基盤維持のための党内融和人事に走った結果が、田中慶秋前法相の辞任を招いた。「年内解散」を明示しないために自民、公明両党との協力関係も構築できていない。

 「内向き」の政権運営を続けるのではなく、新憲法作りを軸とする国のありようを競い、国民の信を問う姿勢こそ国政の閉塞状態を打破する上で不可欠である。◆◆

 

 他紙に比べて紙幅も社説もお値段もすべてがコンパクトなのが産経新聞が他紙と「差別化」しているところだと思うのですが、今回は石原センセイのために普段の2倍の紙幅を使ってのエール大盤振る舞いです。

 肝心の内容ですが、こちらは予想通り。はっきり言ってクズ社説です。


 

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ssh559 社説の読み方〜脱・世論、脱・民意編 [社説の読み方]

<2012>

 

 突然ですが、ここ数ヶ月間、中央メディアで「民意」って言葉をあまり見聞してないような気がするんですが、みなさんどうでしょうか?

 「民意」って言葉は、決めゼリフ的に使われることがとても多いです。選挙に勝った以上それが民意だ、とかね。

 ところが最近は「決める政治」とやらが中央メディアの決めゼリフ。つい最近まで金科玉条だった「民意」はすっかり蚊帳の外。そういえば世論調査で野田政権の支持率がメチャクチャ低くても、あまり大きな話題にしませんな、中央メディアは。

 と思っていたら、とうとう産経クンと読売クンは、民意だの世論だのを政治が汲んではダメ、ゼッタイと断言しちゃいました。ネタは原発依存をどうするかというアレです。


 まずはいきなり産経クンに登場いただきましょう。タイトルからして「世論なんか気にするな」です。

 

◆◆エネルギーと原発 世論で基本政策決めるな (2012.8.31)

 世論に耳を傾ける努力は大切だが、エネルギー問題のような国の基本政策が世論によって決められるルールを確立させてはならない。高度で冷静な政治判断こそが優先されるべきだ。

 2030年の原発比率など日本のエネルギー構成について、寄せられた国民の意見を分析した有識者による検証会合(座長・古川元久国家戦略相)が「少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいる」とする見解をまとめた。

 この見解は、これから政府が着手する国の中・長期的なエネルギー問題と温暖化対策の方向性を定める「革新的エネルギー・環境戦略」の策定作業の本質に影響を及ぼしかねない内容だ。

 検証会合の見解をお墨付きとして、デモに代表される反原発の時論に迎合し、「原発ゼロ」を軸とする新戦略の構築に傾斜するのは禁物だ。

 そうした迎合は、日本の発展に終止符を打つ行為に他ならない。国の存続と繁栄に安定したエネルギーが必須であることは、歴史が示す自明の理である。

 次の選挙で世論の逆風を受けるとしても、エネルギー安全保障の重要性を有権者に説いて、国の将来を確かなものにしてゆくことが、政治家の責務である。再生可能エネルギーの発電能力は、原発に比べると格段に小さく、不安定だからだ。

 そもそも政府が実施した意見聴取会やパブリックコメント(意見公募)、討論型世論調査は、準備不足で問題点も多い。意見聴取会で電力会社の社員の意見表明の機会を奪ったことなどにより、脱原発派が勢いを得た感がある。

 政府の調査では、新聞社などによる世論調査より「原発ゼロ」の回答率が高い。政府の調査そのものが脱原発ムードを醸し出した可能性が疑われる現象だ。

 こうした不確かな調査をよりどころに、エネルギー計画の策定を急ぐのは短慮に過ぎよう。皮相的な原発の性悪論にとどまらず、原発をなくした場合の経済や文化への影響までを視野に入れた議論の深化が必要だ。

 有識者の検証では、20代以下の30%強が「原発維持」の意見であることが注目された。政府は約20年後のエネルギー構成を考えている。若い世代の意見に重みを置いて検討することも重要だ。◆◆

 

 この文面を読むと、何か不都合なこと(浮気とか不正とか)がバレそうになって必要以上に威丈高に出ているオヤジでも見ているような印象を受けます。とにかく自分の立場に有利となりそうなことなら何でも拾い集めて声高に叫んでる。反原発を「持論に迎合」と揶揄したり、「意見聴取会で電力会社の社員の意見表明の機会を奪った」と被害者感情をむき出しにしたり(限られた意見表明者数に対して全会場に電力会社員が確保されていたことの不合理さは意図的に無視しているのかな)、「有識者の検証」なる正体不明のデータを〆に持って来たりと、もう相当に浮き足立ってます。

 で、そこまでして「世論が何といおうと原発だ」と強弁する根拠は、文中にわずか2つのみ。

  • 国の存続と繁栄の安定したエネルギーが必須であることは、歴史が示す自明の理である。(5段落)
  • 再生可能エネルギーの発電能力は、原発に比べると格段に小さく、不安定だからだ。(6段落)

 LNGやメタンハイドレードなどのエネルギー資源の話もないし、コジェネレーションなどの高効率火力発電技術も無視されている。脱原発=太陽光と風力だけでやっていく、なんて誰も言ってないでしょうに。こんなんで「世論が何と言おうと原発だ」と言われたって、誰が納得するんでしょうか。


 

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ssh554 社説の読み方〜消費増税でひとつになろうニッポン編 [社説の読み方]

<2012>

 

 中央紙(一般的には全国紙を呼ばれています)が全部同じような社説を書く時は、ロクなモンじゃない。

 5年以上にわたり社説ウォッチャーをやってきたsshの経験から導き出された結論です。

 ssh開校以来、中央5紙の社説がみんな似たかよったかの時は、本当にくだらない文章ばかりでした。

 岡田ジャパンのW杯サッカーでの活躍(ssh346)小沢一郎の秘書逮捕(ssh260)大分県の教員採用試験不正事件(ssh201)、いずれも5紙みんな同じ論旨のつまらんものばかり。

 なでしこジャパンW杯優勝の時など、どーせまたみんなでホメるだけで大したこと書きゃしねえだろと予想記事まで書いたくらいです(ssh459)。この時は産経クンがブッ飛んだ社説を書いてきて予想は外れちゃいましたが(ssh460)

 

 主要メディアが一斉に同じ方向を向くというのは、アブナいことなのですよ。

 特に政府の方針を支持する時は、本当にアブナい。

 古くはアジア太平洋戦争(日中戦争から太平洋戦争まで)期間中の大政翼賛的報道。近年では9.11テロ以降のアフガニスタン出兵とイラク戦争に対する報道。

 そして、そういうふうに全紙が同じ方向を向いている時は、その方向はことごとく破滅への道でした。アジア太平洋戦争は大多数の国民の命と多くの領土を失った上で無条件降伏という、日本の外交史上最低の結末を迎えました。アフガン侵攻とイラク戦争の泥沼状態はみなさんご存知の通りです。今となっては、イラクで拘束され、自己責任論で日本中からバッシングされたにも拘らず、今だにイラクでボランティア活動に関わっている高遠菜穂子の方がはるかに正義を持っています。(高遠菜穂子のブログ「イラク・ホープ・ダイアリー」はこちら)

 

 

 さて、そのアブナい状況が、またまた発生しております。それは消費税増税。

 この件については「決められる政治」というキャッチコピーを振りかざして、5紙が5紙ともイケイケドンドン。

 中央紙の願いである消費増税法案が可決されたということで、5紙はなでしこジャパン優勝時と同じように大変はしゃいでおります。

 

 そういう低レベルの5本ですので、せめてものエンタメとして、今回もクイズ形式でお楽しみいただきましょう。

 

 [その1][その5]の5本の社説のタイトルと掲載紙を、選択肢より選んで当てて下さい。

 「決められる解答者」目指して、ひとつになろう、ニッポン。

 

選択肢

  1. 産経クン・・・消費税法成立 残る「宿題」迅速に処理を 
  2. 毎日クン・・・増税法成立 「決める政治」を続けよう
  3. 読売クン・・・一体改革法成立 財政健全化へ歴史的な一歩だ
  4. 朝日クン・・・一体改革成立 「新しい政治」の一歩に
  5. 日経クン・・・「この増税を次の改革につなげたい

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