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ssh550 社説の読み方〜デモは威嚇か圧力か編 [社説の読み方]

<2012>

 

 え~みなさん、毎週金曜日に首相官邸前で行われている脱原発デモ(というか集会)に、どのようなご意見をお持ちでしょうか。

 日本にも公汎な市民運動がついに発生したと大きな賞賛を送る人、とにかく黙っていられないと参加する人、中央メディアはもっときちんと取材して報道しろと憤る人(例えば私)TVや新聞しか見てないのであまりよく知らないという人、ネットもケータイも使っているクセに脱原発とはわがままだと批判する人、あれはシナか在日の仕業だとわざわざ反対行動を起こすウヨ君たちと、まあいろんな人がいます。世論は全体としては脱原発の方向に向かっているようですけど。

 

 さて、その中でちょいと変わった主張を見つけました。産経クンの84日の社説で、これは一言でまとめてしまえば「デモの意見を政治に反映してはならない」という実にビシッとしたご意見です。お忙しい方のために、ポイントを太字にして引用します。

 

◆◆首相と原発デモ 会うなら毅然と説明せよ  2012.8.4

 野田佳彦首相が、脱原発などを叫んで首相官邸周辺でデモを続ける「首都圏反原発連合」の代表者と近く面会する見通しとなった。

 面会に応じるならば、首相は関西電力大飯原発3、4号機(福井県)を再稼働させた政府の方針を毅然(きぜん)とした態度で説明すべきである。

 しかし、そもそも野田首相には、代表と会う義務はない。その必要性もまたないのである。

 わが国は、公選によって選ばれた代表者に国政の判断を委ねる間接民主主義(代議制)を政体としている。

 大飯原発は法律に基づく所定の手続きを踏んで再稼働されたものだ。すでに首相自身が記者会見を開き、再稼働の必要性を説明し国民に理解を求めている。

 この政府方針に疑問を持つ国民はいるかもしれない。批判的な立場からの主張や、反対意見を表明する権利はむろん認められている。デモも自由である。首相がこれら国民の多様な意見に耳を傾けるのは当然だ。

 だが、デモの人数の多さや威嚇的な言動、圧力などのため、いったん決めた政府の判断が覆されたり、歪(ゆが)められるようなことがあってはなるまい。大飯以外の原発の再稼働についても、安全性が確保されたなら、粛々と進めてゆくべきだ。

 原発の再稼働に反対する立場の人たちも、政策を変更させたいなら立法府で多数派を形成して実現させるべきである。表面的な声の大きさを頼りにした「民意」を盾に首相に面会を迫り、自らの主張を突き付けていくやり方は、穏当な手法とはいえない。こうしたやり方は前例となり、禍根を残しかねない。

 当初は代表との面会に消極的だった首相の判断が一転した一因には、首相の再稼働決断に批判的な鳩山由紀夫元首相と菅直人前首相が、デモ参加者に同調したことが大きいとされる。

 同じ政府・与党内で首相を支えるべき立場の首相経験者2人が、政府の方針とは全く異なる立場で動いていること自体、理解できない。両氏は反省してほしい。

 党内の結束を図ることと、国のエネルギー政策を左右する原発再稼働をめぐる判断とは全く別次元の話である。両者を一緒にして行動しようとしている野田首相の判断も、また批判されるべきだ。◆◆


 

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ssh549 社説の読み方〜がんばれ!野田佳彦編 [社説の読み方]

<2012>

 

 政治っつーものがここまで民意と乖離して、しかも政権が維持されているというのは、前代未聞じゃなければ森喜朗内閣以来じゃないかという感じの野田佳彦内閣。sshは野田を人間のクズ第2号に認定しておりますが、クズと書くと解りにくいので、いやいやながら野田と書かせて頂きます。

 

 さて、少々時間の経過した7月の社説ですが、この2本はある意味記念碑的な社説です。何せあれほど民主党政権を露骨に批判していた読売クンと産経クンが、野田ファンであることをカミングアウトしたのですから。

 

 まずは読売クン。

 

◆◆離党相次ぐ民主 首相はひるまず体制立て直せ(722日付・読売社説)

 民主党で離党者が相次ぎ、野田首相は、一段と厳しい政権党の運営を迫られている。さらなる離党を防いで政治をいかに前に進めるか。今、それが問われている。

 懸念されるのは、エネルギー政策や環太平洋経済連携協定(TPP)参加など党分裂を誘発しかねない問題で、首相が思うように決断できない事態に陥ることだ。

 民主党の離党者は、小沢一郎元代表のグループ以外からも出ている。理由は、反消費増税に限らない。女性参院議員3人は、脱原発や反TPPも訴えて離党した。

 「次の選挙で生き残れない」と見切りをつけた面もあるだろう。党に対する愛着も薄い。

 輿石幹事長が「国民の信を問う前に、政権が崩壊する」と述べたのは、危機感の表れだ。

 「政権交代」は果たしたものの、政権公約(マニフェスト)の主要政策は、ほぼ総崩れだ。

 党を立て直すには、実現不可能な公約に固執せず、新たな党の目標を設定することから始めることが必要ではないか。

 党のよって立つ基盤を築き、一体性を作り出すために、政策論議を重ねるべきだ。

 民主党には、手順を踏んで決めた政策を尊重せず、議論を蒸し返す体質もある。全議員が参加する場での議論は大切ではあるが、それだけでは収拾がつかない。離党の呼び水にもなっている。

 政策の最終決定へのプロセスをもっと工夫すべきだ。

 鳩山元首相ら一体改革関連法案の採決時に造反した議員が、反消費増税の立場から執行部を揺さぶる構えを見せている。

 鳩山氏は首相官邸前で行われた反原発再稼働デモにも参加した。大衆迎合そのものではないか。

 この先、原発政策やTPPの方針決定を巡って、党内の意見が大きく割れる可能性もある。

 前原政調会長を中心に、今から十分議論しておくことが、肝要である。次期衆院選の公約を準備することも急がねばならない。

 今度こそ、実現可能な公約となるよう精査が必要だ。

 民主党の分裂に「極めて遺憾」と不満を表明した支持団体の連合との関係改善も課題だ。

 だが、国民政党として、政策や選挙でどこまで連合に依存すべきかということも議論の対象になるのではないか。

 党執行部は、時には毅然とした態度を示し、所属議員が政府の決定や党議拘束に従う政党文化を育てていかなければならない。◆◆

 

 どーです、この「がんばれ!」のエールの送り方は。いつもの抑制の効いた上手な物言いはもはや「実現不可能」ということでしょうか。読売クン、もう完全に野田応援団です。

 ほとんど読む価値のないヨイショ社説ですが(メディアが時の権力を応援するのは危ないサインであります)、ガマンして読んで要約すれば、

 「脱原発や消費税増税据え置きやTPP反対は絵空事だ。そんなもの捨ててしまえ。」ですかね。

 マジメに反論すれば、以上3点がただの絵空事ではないということが明示されれば、この記事はゴミクズとなります。で、そういう指摘はすでにたくさんあります。いちいち挙げませんが。

 


 

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ssh541 7/16脱原発集会の中央5紙の扱い〜社説の読み方番外編 [社説の読み方]

<2012>

 

—717日付追記あり

 

 本日716日、東京の代々木公園で「さようなら原発10万人集会」がありました。

 ssh534では、中央メディアが首相官邸前の脱原発集会を無視しているということを書きましたが、どんなにメディアが無視しても運動はますます活性化しています。さすがに最近はしぶしぶ報道を始めたという感じです。

 

 さて、本日の集会を中央5紙がどう扱っているか。紙面のチェックは大変なので、午後9:00時点での各紙サイトの扱いをチェックしてみました。

 チェック方法は至って単純でして、

  1. そのサイトにアクセスして、トップページにこの集会に関するアイコンがあるかをチェックする。
  2. アイコンがない場合は「代々木公園」でサイト内検索をかけてみる。

 

 まずは朝日クン。

 朝日クンはトップページの一番上の見出しアイコンがこの記事でした。字数も多く、報道する気ありありです。記事は以下の通り。

 

◆◆「脱原発」を訴える大規模な市民集会「さようなら原発10万人集会」が16日午後、東京・代々木公園で開かれた。ノーベル賞作家の大江健三郎さん(77)らが呼びかけた署名運動「さようなら原発1000万人アクション」の一環。約17万人(主催者発表)が全国から集まり、原発の再稼働に踏み切った野田政権に方針撤回を迫った。

 「たかが電気のためになんで命を危険にさらさないといけないのでしょうか。子どもを守りましょう。日本の国土を守りましょう」。集会は午後1時、呼びかけ人の一人、音楽家の坂本龍一さん(60)のあいさつで始まった。

 続いて壇上に立った大江さんは、6月15日に約750万人分の署名の大半を野田佳彦首相あてに提出した翌日に野田政権が関西電力大飯原発の再稼働を決めた経緯に触れ、「私らは侮辱の中に生きている。政府のもくろみを打ち倒さなければならないし、それは確実に打ち倒しうる。原発の恐怖と侮辱の外に出て自由に生きることを皆さんを前にして心から信じる。しっかりやり続けましょう」と訴えた。

 「冥土のみやげに皆さんの集まった姿を見たかった」。こう切り出したのは作家の瀬戸内寂聴さん(90)。「政府への言い分があれば、口に出していいし、体に表していい。たとえ空しいと思う時があっても、それにめげないで頑張っていきましょう」

 会場では音楽ライブやトークショーも開催。参加者は午後2時に集会が終わった後、渋谷など繁華街を「再稼働反対」と声を上げながらデモ行進した。

 集会は、原水爆禁止日本国民会議(原水禁)が中心となって開催。労働組合の旗がたくさん掲げられるなか、手作りのプラカードを掲げる参加者も目立った。参加者数は担当者が分担して会場入り口の約10カ所で目測で数えて合計したという。昨年9月に東京・明治公園で開催した集会には6万人ほどが集まったが、今回はその規模を上回り、東京電力福島第一原発事故に関連した集会では最大規模としている。警視庁は公式発表していないが、関係者によると、把握した参加者数は約7万5千人だったという。

 東京の集会に呼応し、各地でも集会やデモ行進があった。◆◆


 

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ssh525 社説の読み方〜沖縄返還40周年編(2) [社説の読み方]

<2012>

 

 では、1日遅れで社説展開した産経クンに登場していただきましょう。

◆◆沖縄復帰40年 安保激変乗り切る要石に

 沖縄の本土復帰40年を迎え、地元宜野湾市で政府・沖縄県共催の記念式典が行われた。

 沖縄は先の大戦で多大な犠牲を強いられ、今も在日米軍基地専用施設の74%が集中する。歴史的にも戦略的にも特異なその境遇に思いをはせつつ日本の平和と安全を見詰め直す機会としたい。

 とりわけ国民全体で考えたいことは、この間に日本の安全保障環境が激変したことだ。1972年の復帰当時はベトナム戦争末期に至り、冷戦下の日米にとって最大の脅威は北方のソ連だった。

 40年後の今、アジア太平洋の脅威の焦点は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の強引な海洋進出に変わった。必然的に尖閣諸島を含む沖縄の戦略的重要性も、ますます増大しているのが現実だ。

 加えて米国は巨額の国防費削減を迫られ、日本には「米国頼み」を脱して自らの安全確保と日米同盟への一層の貢献が求められていることを忘れてはなるまい。

 復帰当時96万人だった人口は140万人となり、本土で活躍するスポーツ選手、芸能人など人的・文化的交流も深まった。半面、本土との経済格差は小さくない。

 大戦時の沖縄戦の戦没者は18万8千人で、うち12万人以上が県民の犠牲者だ。戦後も長く米施政権下に置かれた。こうした歴史をもっと国民で共有すべきだろう。

 同時に、沖縄県民も悲しい過去を超えて未来にも目を向けてほしい。ルース駐日米大使も「沖縄は日米同盟の礎だ」と評価した。沖縄の位置や役割を冷静にとらえつつ、「安保も経済も」の両立を目指したい。日本の安全が守られてこそ沖縄の平和が維持される。

 普天間移設を含む米軍再編計画も基地負担削減と抑止力強化を目的とし、政府は地元振興を図ることが原点だったことを改めて想起することが必要だ。普天間の固定化を回避する道もそこにある。

 にもかかわらず、民主党政権下で迷走を重ね、国民の不信や亀裂を招いた責任は重大である。

 野田佳彦首相は式典で、同盟強化、基地負担軽減、振興を通じて「日本の安全を確保する」と約束した。その言葉を着実かつ速やかに行動に移してもらいたい。

 沖縄は返還されたが、北方領土はロシアに、竹島は韓国に不法占拠されたままだ。これらが返らない限り、戦後は終わらない。そのことも銘記しておきたい。◆◆

 

 まず、1日遅れで社説展開したことを批判しておきます。

 沖縄復帰40周年が2012515日であることはずーっと前からわかっていたのですから、あらかじめ準備して当日に掲載するのは簡単です。1日遅れの展開は、産経クンがこの話題にさほど重きを置いていないという意味を表しています。そういう意図であるなら許し難いし、意図がないのならあまりに無神経です。日経クンにまで遅れを取っては言い訳は効かんでしょう。

 で、内容がまた軽い、軽い。サラリと要約しますと、

  • 大事なこと・・・安全保障 日米同盟 経済振興 未来 民主党の責任 日本の安全 北方領土 竹島
  • 大事なことに比べて軽いこと・・・基地集中 沖縄の悲しい過去 沖縄の平和

 産経クンも東京目線丸出し。フジサンケイグループってもんです。

 で、そうやって沖縄にさらなるガマンを求めた上で守られた「日本の平和」の中、彼らは何をするのか?

 

◆◆AKB総選挙 フジテレビが生中継

 66日に東京の日本武道館で行われるAKBの選抜総選挙を、フジテレビが生中継することになった。実際の開票特番風にL字画面も活用、すべての開票結果を速報する。(以下略)(読売新聞 516)◆◆

 

 こういうのを見ると、竜巻がお台場を直撃してくれないかなと願ったりしたくなります。で、実際にそうなったら「天罰だと思う」とコメントして差し上げましょう。


 

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ssh524 社説の読み方〜沖縄返還40周年編(1) [社説の読み方]

<2012>

 

 あれからもう40年ですか。

 沖縄がアメリカ領から日本へと返還されたのは1972年。私は小学生でした。

 その小学校のある先生が結婚して沖縄にハネムーンに行ったというのは覚えています。当時、沖縄はもっとも身近な「海外」でした。アメリカ領だったので、当然クルマは右側通行でした。

 

 沖縄がアメリカから日本に返還されて40周年という節目の515日ですから、本来であれば言祝ぐべきめでたい日のはずです(歴史的には沖縄はもともと日本でもアメリカでもない独立した国ですが)。しかし現実は全然そうじゃない。そういう訳で、この日の中央紙社説もあまりめでたくない言説が並びました。


 まずは朝日クン。2本立てで、リキ入ってます。

◆◆沖縄復帰40年まだそこにある不条理

 40年もともに過ごせば、お互いの気持ちや痛みをわかりあえるものだ。しかし、きょう復帰40年を迎えた沖縄と本土との関係は、そうなっていない。

 朝日新聞と沖縄タイムスの4月の共同世論調査では、米軍基地が減らないのは「本土による差別だ」との回答が、沖縄で50%に上った。こんな答えを生む状況を、放っておいていいはずがない。

 日本が主権を回復した1952年、国内の米軍基地の9割は本土にあった。その後、沖縄への移転、本土内での集約が進み、復帰時には59%が沖縄にあった。いまは74%で、「基地の中に沖縄がある」と言われる。

 この間、政府は沖縄の人たちの神経を逆なでしてきた。

 見通しが立たない米海兵隊の普天間飛行場の名護市への移設を「唯一の有効な解決策」と言い続けるのは、その典型だ。

 そもそも、なぜ沖縄に海兵隊が必要なのか。

 朝鮮半島や台湾海峡に近い戦略的要衝にある沖縄に存在することが「抑止力」になる――。政府はこう説明するが、戦略的位置づけには専門家の間でも議論が分かれる。近年は米議会からも「沖縄には必要ない」との声も上がっている。

 米軍の存在意義は、この40年で変化している。共産主義の防波堤から、冷戦後のテロとの戦い、朝鮮半島の有事対応、そして中国の脅威への備えと重点を移してきた。

 沖縄からすれば、基地存続ありきの理屈づけに見える。

 復帰40年の節目にあたって、原発と基地問題を対比する考え方が増えてきた。

 原発事故は、電力の受益者である多くの国民の目を、エネルギー政策に向けさせる契機になった。

 米軍の沖縄駐留による安全保障の受益者は、主に本土の人々である。だが、全人口の1%の沖縄県民がいくら訴えても、残る99%の間で、基地をめぐる議論は広がらない。

 猛烈な騒音被害も、事故への日常的な恐怖感も、本土の人々が共有しようとしないからだ。

 一方で、同じ沖縄の無人島の尖閣諸島をめぐる動きには、一部の人々が敏感に反応する。

 この落差は、安全保障をめぐる国民世論のいびつさを象徴しているように見える。

 経済的な支援策では埋めきれない不条理なまでの重荷を、沖縄は負っている。負わせているのは、本土の人々だ。

 この現実から目をそらすような安全保障政策を、いつまでも続けていくわけにはいかない。◆◆


 

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ssh502 社説の読み方〜君が代訴訟最高裁判決編 [社説の読み方]

<2012>

 

 学校現場の日々のどんな教育活動をも差し置いて、チョー強力な話題となる約1時間の行事。それが卒業式。

 話題の中心は学校でも生徒でも保護者でも来賓でもなく、40秒弱の国歌斉唱。この40秒間の行動だけで処分までされてしまうのが日本のピョンヤン、東京都。

 116日に最高裁で、その東京都の処分に関する判決が出ました。内容はご存知の通り、戒告は妥当だが、減給や停職などの重い処分はやり過ぎ。

 

 この件については、珍しく日経クンまで社説展開してくれました。ssh的には大変ありがたい展開です。では社説の読み方と行きましょう。まずは朝日クン。

 

◆◆君が代判決行き過ぎ処分に歯止め

 卒業式や入学式のシーズンを前に、最高裁から注目すべき判決が言い渡された。

 「式では日の丸に向かって立ち、君が代を歌うように」。そんな校長命令に従わなかった東京都の教職員への処分が、妥当かどうかが争われた裁判だ。

 結論はこうだった。

 規律や秩序を保つために、戒告処分はやむをえない。それをこえて減給や停職とするには、慎重な考慮が必要だ。式典を妨害したなどの事情がないのに、命令違反をくり返したというだけで、こうした重い処分を科すのは違法である――

 日の丸・君が代は戦前の軍国主義と深い関係があり、その評価は一人ひとりの歴史観や世界観に結びつく。

 最高裁は、昨年の判決で「起立や斉唱を命じても、憲法が保障する思想・良心の自由に反しないが、間接的な制約となる面がある」と述べ、学校側に抑制的な対応を求めた。今回の判決はその延長線上にある。

 私たちは、日の丸を掲げ、君が代を歌うことに反対しない。だが処分してまで強制するのは行きすぎだと唱えてきた。

 その意味で、戒告が認められたことへの疑問は残るが、最高裁が減給・停職という重大な不利益処分に歯止めをかけたことは、大きな意義がある。

 教育行政にかかわる人、なかでも橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会のメンバーは、判決をじっくり読んでほしい。

 維新の会は大阪府と大阪市で「命令に2度違反で停職」「研修を受けたうえで3度目の違反をしたら免職」という条例の制定を打ち出していた。

 違反に至った背景や個別の事情には目を向けず、機械的に処分を重くしていくもので、今回の判決の趣旨に照らして違法になるのは明らかだ。

 さすがに橋下市長と松井一郎知事は見直す考えを示した。だがそれは、停職処分とする前にも研修の機会を設けるという案で、問題の本質を理解した対応とはとても言えない。

 選挙で圧勝した2人には、民意の支持という自信があるのだろう。もちろん民意は大切だ。

 しかし、精神の自由に関する問題を、多数派の意向や思惑で押しきってはならない。それは歴史の教訓であり、近代民主主義を支える精神である。

 自分とは異なる意見の存在を受け止め、心の内にはむやみに踏み込まない。そうした寛容な土壌のうえに、しなやかで、実は力強い社会が生まれる。

 判決の根底に流れるこの考えをしっかりと受け止めたい。◆◆

 

 朝日クンは一貫して、国旗国歌そのものは否定しないが、教育現場への強制は反対というスタンスです。これは教職員組合の主張と一致しています(日教組が国旗国歌を否定していると怒る人がいますけど、それは間違いです。彼らの主張は朝日クンとぴったり同じ)

 ということで、朝日クンは減給・停職に歯止めをかけたことを高く評価しています。一方、戒告をOKとしたのは疑問が残ると。これは朝日クンのスタンスからすればごく自然なレスポンスですね。大阪の状況に触れているのも、タイミングからして当然でしょう。

 というわけで、ほとんど予想通りの社説です。


 

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ssh493 社説の読み方〜フクイチ収束宣言編 [社説の読み方]

<2011>

 

 1216日、野田首相が福島第一原子力発電所(以下フクイチ)の事故の収束を宣言しました。

 あ~良かった、と心底安心したという方、いらっしゃいますか?まさかいないですよね。

 今回の社説の読み方は、そんな「おいおい、収束なんか宣言しちゃっていいのかよ?」という事故収束宣言に関して。

 では参りましょう。トップバッターはsshのアイドル産経クン。

 

◆◆冷温停止状態 長期戦への覚悟を新たに

 福島第1原子力発電所の事故について、野田佳彦首相は原子炉が「冷温停止状態」に達したとして、事故の収束に向けた工程表の第2ステップの完了を宣言した。大震災で大破した原子炉が、初期の危険な状態から脱したことを意味する大きな節目である。

 来年1月を当初の達成目標としていた第2ステップが、現場関係者らの努力で年内に実現したことを評価したい。放射線による犠牲者を1人も出さずに、重大事故後の原発を安定化させたことは、チェルノブイリ事故と比較しても特筆に値する。

 ただし、冷温停止状態になったことで事故との戦いが一気に終結に近づくわけではない。廃炉までには最長で40年という長い時間を要する。世界に前例のない複数炉の事故を安全かつ確実に処理することは日本の責務だ。政府や関係自治体、周辺住民と国民がそれぞれの立場で、長期戦に取り組む覚悟を新たにすることが必要だ。

 冷温停止は、原子炉圧力容器底部の温度が100度以下に保たれ、放射性物質の新たな放出が抑制・管理されている状態を指す。本来は正常な原子炉の安定状態を指す概念だ。

 福島第1原発の場合は、大津波による全電源喪失で炉心溶融を起こし圧力容器の底に穴が開いた。損傷に伴う発熱は抑えられたとはいえ、正確な状態すらまだ把握されていないのが現状だ。冷温停止に「状態」の2文字が付け加えられているのは、このためだ。

 野田首相は「廃炉と被災者の生活再建に一丸となって取り組む」としており、政府は事故に伴って設定した警戒区域、計画的避難区域の見直しを本格化させる。

 低レベル放射線の健康影響を検討してきた内閣府の作業部会は、避難区域設定基準とした年間20ミリシーベルトを「適切」とする見解をまとめた。避難住民の帰宅や除染作業も年間20ミリシーベルト以下が目安となる。

 除染に伴う廃棄物をどこでどう処理するかなど、難しい課題は山積している。原発周辺の沿岸地域は瓦礫(がれき)撤去が他の被災地に比べて大幅に遅れている。住民が元の暮らしを取り戻せるよう、迅速なインフラ整備が必要だ。

 風評被害などが被災者の生活再建を妨げることは、今後はあってはならない。政府や東京電力には国内と世界に向けての適正な情報発信が求められる。◆◆

 

 産経クン、収束宣言を評価しております。日頃民主党政権を親の仇のごとく攻撃しているわりには優しいことです。

 この社説で一つほめておきたいのは、「冷温停止状態」というのが「冷温停止」とは異なるものだということを指摘していること。冷温停止状態という用語はそもそも原子力工学には存在しないということまで指摘すればもっと良かったです。

 しかし、例によって雑な部分もちらほら。

 第2段落で「放射線による犠牲者を一人も出さずに」とありますが、フクイチではすでに3人の作業員が亡くなっています。うち一人は急性白血病による死亡です。東電は被曝によるものではないと否定していますけど、相当眉唾じゃないですかね。

 それと、第5段落に「津波による全電源喪失」とありますけど、これもちょっと東電チックでメディアっぽくない。

 フクイチが使っているGE社のマークIという原子炉は、構造的にかなり地震に弱くなってます。津波以前に原子炉の配管が地震で壊れた可能性がかなり高いという指摘がなされています。

 で、この社説の終盤は、ほとんど何も言っていないのと同じです。小論初心者がよくやる、字数をかせぐための「聞いたようなことの羅列」です。

 後半に行くに従って間延びした感じですが、いつものケッサクな産経クンからすると、わりと努力賞です。


 

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ssh460 社説の読み方〜なでしこ優勝社説のssh予想は的中したか? [社説の読み方]

<2011>

 

 さあそれでは、ssh459の答え合わせ。

 せっかくですから、PK戦での優勝になぞらえて、こちらもPK戦方式で判定することとしましょう。

 全国紙5紙を5本のPKに見立てましょう。私がキーパーで5紙がキッカーという設定でいかがでしょうか?キッカーの蹴りが私の「予想通り」なら止まったということで私の勝ち。私の予想が外れたらPK成功で私の負け。

 PKを止めるのは難しいですし、私の読みが過半数の3紙で当たったら、3本止めたということで私の勝ちということにさせていだだきます。ちょっと甘いですけどね。

 

 では、PK戦が始まる前に、私の「読み」をもう一度確認。

<全紙が用いると思われるネタ>

 ・震災(と放射能禍)に苦しむ日本に勇気と希望を与えた。

 ・沢選手のこと。

 ・メキシコ五輪の銅メダルの話。

 ・女子サッカーの歴史は浅いのによく頑張った。

 ・体格差を跳ね返したのがえらい。「サッカーは体格ではないことを証明した。」とかね。

 ・リードされても諦めずに追いついたのが立派。

 ・特に上の3つに絡めて、私たちも今の日本の逆境に負けず頑張らねばならない。

 ・あとは、もしかしたら、例の「カンドウヲアリガトウ」かな。

<朝日クンと毎日クンの使いそうなネタ>

 ・これまでの日本の女子サッカーの歴史。

 ・あとはこれといってなく、終止優等生的な読み応えのない社説になる可能性高し。

日経クンの使いそうなネタ>

 ・経済への波及効果への期待。

 ・ただし、ヘタすると社説展開しない可能性アリ。

<読売クンと産経クンの使いそうなネタ>

 ・祖国への想いが選手を奮闘させた。

 ・日本の女性はどーたらこーたらという、男女比較論。場合によっては、男性への叱咤。

 ・海外プレスの評価(読売クンと産経クン、実は結構な外国コンプレックスです)。

 ・関係者インタビューの引用。(読売クンと産経クンは、文章が割とTV感覚です)。

 ・産経クンは他に「家族の力」と「管内閣批判」も盛り込む可能性大。

 

 

 それでは参りましょう、ssh対全国紙社説PK戦。

 まずは1本目。1本目のキッカーは朝日クン。さあ来い!


 

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ssh459 「なでしこ」優勝への各紙社説の行方を予想する [社説の読み方]

<2011>

 

 いや、まったく最後まで落ち着かない試合でしたね。女子サッカーW杯の決勝戦。終止劣勢から2回追いついてのPK勝ちですもんね。ホントに最後まで前向きな姿勢には頭が下がります。

 私は中継を見る予定はなかったんですが、娘が5:00ころ「鼻血が出た」とか言って起きてきたものだから目が覚めちゃいまして、んじゃせっかくだからとTVつけました。後半15分くらいで0-0でした。家族は全員寝てたので、TVは蚊の羽音のような実に小さなボリュームにして、本人は興奮を押し殺して「入ったー!」と無声音で叫んでました。

 すばらしいですね。チームで戦う種類の球技(サッカー・バレー・バスケ・ホッケー・野球・ソフトボール・ハンドボールなど)で国際大会で優勝なんて、ここ20年では北京五輪のソフトボールとWBC連覇くらいしか思いつきません。


 さて。サッカーの試合の行方を予想するのはタコの仕事らしいですけど、私はタコじゃないので、別のものを予想させていただきます。題して、「なでしこ」優勝への各紙社説の行方を予想する。

 狙いは単純です。明日の朝刊でほぼ全紙に載るであろう今回の日本チーム初優勝に関する社説が、どのようなものになりそうかを予想しようという記事です。

 

 え?感動に水を差すな?

 すみませんねえ、何せ私ゃアマノジャクですから。みんなが一斉にワーッと走りだすと、どーしても逆走したくなるんですよ。

 では予想。

 

 

<全紙が用いると思われるネタ>

 ・震災(と放射能禍)に苦しむ日本に勇気と希望を与えた。

 ・沢選手のこと。

 ・メキシコ五輪の銅メダルの話。

 ・女子サッカーの歴史は浅いのによく頑張った。

 ・体格差を跳ね返したのがえらい。「サッカーは体格ではないことを証明した。」とかね。

 ・リードされても諦めずに追いついたのが立派。

 ・特に上の3つに絡めて、私たちも今の日本の逆境に負けず頑張らねばならない。

 ・あとは、もしかしたら、例の「カンドウヲアリガトウ」かな。


 

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ssh451 社説の読み方〜実戦トレーニング編の解答例 [社説の読み方]

<2011>

 

 では、ssh450の解答例を。

 

 説明が面倒なので、1本目の大阪府の君が代起立条例に関する方をA、2本目のドイツの脱原発に関する方をBと呼ぶことにします。

 

 問1 共通点と相違点の指摘の解答例

<相違点>

 ・学校現場での国旗国歌指導も原子力推進もともに産経の自説である。Aは自説に追い風を受けての文面であるのに対し、Bは自説への逆風に対する反論である。

 ・Aは「当然」「当たり前」という常識論が論拠である。Bは数値やドイツ独自の事情を紹介することを論拠としている。

 ・Aはテーマを「疑うことはおかしい」としている。Bはテーマを「疑うべきだ」と主張している。

 ・上を言い換えると、Aは「考えるな」という意見であり、Bは「よく考えろ」という意見である。

 ・Aは他国との比較が一切述べられていない。Bはドイツと日本の比較論である。

 ・Bは今後の展開を見守る必要性を指摘し、ドイツの国民投票はファイナルアンサーではないと主張している。対して、Aは条例可決をファイナルアンサーとすべきだと主張している。

 ・Aは異を唱える教職員などの「少数派」は非常識で政治的であると批判している。Bはドイツの「多数派」国民の判断よりも産業界という「少数派」の憂慮を肯定的に評価している。

 ・Aはテーマへの礼賛であり、Bはテーマへの批判である。

 

 つまりね、AとBは、論の立て方がまるで反対なんですよ。


 

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